映画『デス・プルーフinグラインドハウス』の感想

作品情報

 時間:113分
 原題:Death Proof
 製作:2007年アメリカ
 監督:クエンティン・タランティーノ
 脚本:クエンティン・タランティーノ
 撮影:クエンティン・タランティーノ
 
 キャスト:
カート・ラッセル
ヴァネッサ・フェルリト
ゾーイ・ベル
ロザリオ・ドーソン
ローズ・マッゴーワン
メアリー・エリザベス・ウィンステッド
クエンティン・タランティーノ

予告編

実は「スキヤキ・ウエスタン・ジャンゴ」を、ついうっかり観てしまい、そのあまりのひどさにワタクシの脳は拒絶反応を起こしました。
観た後数日間、激しい嫌悪感と後悔にさいなまれ、急性神経症にまで陥っていました(嘘)。


やはりウエスタンフリークのKも、かなり憤慨しており、すでにふたりで散々不満を言いあって、悪い思い出は早く忘れようということで、もうこのことは過去のことになっているのでした。
それにしても映画を観て、ここまで嫌悪感に襲われたのは今まで一度もありません。
いくらひどくても、とりあえずは作った人たちの思いみたいなものが、どこかに必ず感じられるってもんです。
人生の汚点ですね。ああ、なんということ。
私の映画への愛と情熱は、ズタズタに引き裂かれたのです。
修業が足りないから、こういう間違った判断をしてしまうのですわ。精進しなくては。
タランティーノ監督が出演してるというのもかなり気になった理由ですが、すっかり商業的戦略にだまされてしまいました。
ただの話題作りに過ぎなかったのです。

千葉真一さんがこの件とはまったく別のインタビューで、
「このままでは日本映画界はダメになるんじゃないかと危機感を感じます。」
と発言されていましたが、
私はあの悪意とも思えるくらいの劣悪なものを観た後に思いました。
日本映画界は、すでに終わってしまったんですね。

あれは完璧なまでに海外へ向けての商業戦略で、純粋な作品作りの思いはひとかけらも見られませんでした。

もう~~~よほどのことがない限り新作邦画は観ないったら!
という固い誓いを持てたことは自分の映画人生にとって大いに収穫だったんです、きっと。
ってことで、ここでプラス思考でまとめたので、この話題は終了とします。

さて、その最悪↓↓↓な気分を、ものの見事に吹き飛ばしてくれたのが、この「デス・プルーフ・イン・グラインドハウス」でした。
もう最高っ♪
天才的にキレてる監督、クエンティン・タランティーノ。
先日、娘がまだ「キル・ビル」を観ていなかったので、自宅で一緒にDVDを観賞しました。
楽しかったですね~♪
千葉さんも栗山さんも、素晴しいです!

また話がそれてしまいましたが・・・
この「デス・プルーフ」の印象は、低予算映画に見せかけた一流の作品で、”そうは見えない”というところに驚くほどのこだわりと手間隙と情熱をかけているという、・・・これは言ってみれば侘びさびの世界に通じるものがありますね(笑)。

このようなキワドイ描写を含む作品をスラッシャー映画というんだそうで、
監督はわざわざその「モドキ」映画として作っているという念の入りよう。
B級的に楽しめるツボが満載でした。
その演出力のみごとさにはいつも感心しながら、いつもうまい具合に乗せられてしまうので、それがまた快感でもありますね。
フェイクの予告編から始まって、その時点でもうワクワクしてきます。
画面に傷をつけて古い感じを出したりと、そのアートなセンスにも脱帽でした。

キャスティングもすごく良かったです。
スタイルが良くて美人で強い女の子たちは、チャーリーズ・エンジェルを思い出させます。
チアガールの衣装を着ているのは「ダイハード4.0」でマクレーンの娘を演じたメアリー・エリザベスで、今回はボケ役でしたがなかなかいいんですね~
ロザリオ・ドーソンもトレイシー・トムズも、最高にキレてて素敵でした♪
また、変態殺人魔のカート・ラッセル、彼も楽しそう~に変態役を演じていて、いい~味出してました。
監督は俳優の使い方もほんとうにお上手。
こういう表現は大変失礼かもしれませんが、悪いものを観たあとなので、いつもの何倍もタランティーノ監督の映画への思いや情熱やこだわり、そして巧さが実感できましたね。

「レザボア・ドッグ」や「キル・ビル」などの、監督の過去作品を観ている人にはツボに来るシーンをいくつか楽しめることでしょう。

着メロには思わず、娘と2人で「ププーーー!」って吹き出してしまいましたね(笑)。
そこでそうくるのね!!!本当にお遊びが上手です。

女の子たちが延々と意味のあるんだかないんだかよくわからない会話をするシーンが続いていき、まーどうなるのかしらと思っていると、思いもよらない展開が待っているという仕組み。
会話の中の、
「じらしたあとに許すと燃えるわよ~」
(↑ちょっと正確ではないかもしれません、記憶が薄れているので)
というセリフに、この作品の意味が象徴されています。
ニクイ演出です~~。
そしてあの意味なくダラダラとしているかのような、いかにも普通に女の子たちの話していそうな内容で、しかも微妙~~にラブコメ的な要素を取り入れているとこなんかも、かなり笑えましたね。

また、このセリフも気になりました。

「CDじゃなくて、カセットテープ!!」

・・・って嫌に強調するなあと思ってたら、終わってからなるほどね~~と思いました。
ここらへんのアナログ感への追及とコダワリが、タランティーノ的なんですね。

とにかく終盤のゾーイ・ベルさん生身のカーアクションは、時間をかけて撮っているだけあって素晴しい出来栄えでした。思わず拍手もの!

『バニシング・ポイント』を観たくなりました。
あとカート・ラッセル主演の『ニューヨーク1997』も。
ピーター・フォンダの『ダーティメリー・クレイジーラリー』も観たいし・・・
というわけで観終わってからいろいろな作品が観たくなって大変です(^^)
こういうのって、嬉しいんですよね~

それに、深夜遅くTV放映していた『チャーリーズエンジェル』などの、ちょっとアダルトな香りの海外ドラマや、子供のころに『仮面ライダー』とか『タイガーマスク』とかにワクワクドキドキしていた感じ、
なにかこう・・・後ろめたさの漂う、怪しいものを観ているような感覚。
そんな感じを思い出していました。

次回は第二次大戦ものということで、楽しみにしております。

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