『TENET』と『ウエスタン』の共通点を検証してみた

2021年5月6日

作品情報

  
 原題:C’era una volta il West/英題:Once Upon a Time in the West
 製作:1968年 イタリア、アメリカ 
 監督 :セルジオ・レオーネ
 脚本 :セルジオ・レオーネ、セルジオ・ドナティ、ミッキー・ノックス(英語版台詞)
 原案 :ダリオ・アルジェント、ベルナルド・ベルトルッチ、セルジオ・レオーネ
 製作 :フルビオ・モルセッラ
 製作総指揮 :ビーノ・チコーニャ
 音楽: エンニオ・モリコーネ
 撮影 :トニーノ・デリ・コリ
 衣装デザイン:カルロ・シミ、アントネラ・ポンペイ
 上映時間 165分/175分(ロングバージョン)
 

◆キャスト

ハーモニカ: チャールズ・ブロンソン(大塚周夫)
ジル・マクベイン :クラウディア・カルディナーレ(小原乃梨子)
フランク: ヘンリー・フォンダ(瑳川哲朗)
シャイアン: ジェイソン・ロバーズ (糸博)
モートン :ガブリエル・フェルゼッティ(小林清志)
ブレット・マクベイン: フランク・ウルフ(石住昭彦)
ストーニー:ウディ・ストロード
スネイキー :ジャック・イーラム(北村弘一)
サム :パオロ・ストッパ(藤本譲)

あらすじ

物語は物寂しい西部のアリゾナ州にある駅から始まる。駅で何者かを待ち受ける三人のギャングたち。そこに現れたハーモニカを吹く謎のガンマンはあっというまに三人のギャングを射殺してしまう。

舞台は変わって荒野の一軒屋、そこでは開拓者のブレット・マクベインが再婚相手を迎え入れるための準備をしていた。しかし突如として現れたならず者フランクとその部下達によってマクベイン一家は皆殺しにされてしまう。更にフランクは偽の証拠を現場に残すことで事件を山賊のシャイアン一味の仕業に見せかける。
ブレッドの新妻であるジルは夫を殺した男への復讐と、女一人で西部で生きていく決意をする。

実はフランクがマクベイン一家を殺害したのは、マクベイン一家の土地を奪い取ろうとする鉄道王モートンの差し金だった。事件の真相を探ろうとするシャイアンと、フランクを付け狙う「ハーモニカ」は美しい未亡人ジルと彼女の財産を守るために協力しあう。

予告編

『ウエスタン』を再見したきっかけ

『TENET』の脚本は『ウエスタン』(ONCE UPON A TIME IN THE WEST)の脚本を参考にした。と監督がインタビューで語っていて、「ええっ???どこが??」となりまして。

早速DVDを引っ張り出してきて『ウエスタン』を観賞しました。
過去、何度も観た作品ではありますが、大好きだし名作だしで、今後も何度も観るとは思っております。
が、今回このような理由で再び観ることになるとは思いもよりませんでした。

私が所有しているのはこちらの2枚組DVD。音声解説、特典映像つき。
ウエスタン スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]

『ウエスタン』と『TENET』の共通点とは?

『ウエスタン』と『TENET』の共通点は、ざっくり言うと「人妻復讐劇」です!\(^o^)/イエーイ
それを助ける通りすがりの男が主人公。
主人公の名前はなく、どこから来てどこへ行くのかも不明。

あと、伏線回収が秀逸。
その伏線回収をそこで!?というのが、二箇所もあるところ。

何気に、さり気ないバディもので、相棒は○○してしまうところ。

美女を中心に物語が進行するところ。

基本、ハードボイルド。このあたりも『TENET』との共通点かもしれません。

ハーモニカの相棒(と言えるかどうかは微妙ではあるが)が〇〇するところ・・・これはネタバレになるので一応、伏せて〇〇としておくけど。

悪役と人妻がセクシーに絡むシーンとかも、共通点か?

・・・大体、こんな感じかなと私は思ったけど、2つの作品をご覧になった方はどう思われるだろうか?

『ウエスタン』の見どころポイント

 
★見どころ1:レオーネ監督が製作する気になった経緯と、悪役ヘンリー・フォンダ
当時、『荒野の用心棒』『夕陽のガンマン』『続・夕陽のガンマン』の「ドル箱三部作」を撮影し終えたレオーネ監督は、西部劇というジャンルでやりたいことは全てやりつくしてしまったそうで、西部劇を創る気分ではなかったようです。

そんなレオーネ監督は、新しいジャンルに向けて計画中でした。それがまさに、禁酒法時代のユダヤ人ギャングを描いた映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』(実現は17年後)。
ところが、ハリウッドがレオーネ監督に期待したのは、従来のマカロニ・ウェスタンだったんですね。
気が進まなかったので辞退したものの、パラマウント映画がヘンリー・フォンダが出演するということになると、それならば!と、レオーネ監督はやる気になったようです。
監督の心を動かしたヘンリー・フォンダすごいですね~!

ところがヘンリー・フォンダというと、それまでは「アメリカの良心」の象徴であり、そんな彼が悪役を演じることに抵抗を感じた観客が多かったため、アメリカでは、『ウエスタン』は期待されたほどのヒットにはならなかったのです。
そうした先入観なしのヨーロッパや日本では大ヒットとなり、レオーネ監督の評価を更に高めることになったのでした。2005年にはアメリカの雑誌『TIME』によって映画ベスト100中の1本に選ばれるまでになりました。
まさに映画史に残る名作西部劇となったわけです。

★見どころ2:セリフの少なさ。
『夕陽のガンマン』などでもそうなんですが、「・・・・・・・。」みたいなシーンが非常に多いです。
なので、俳優さんたちの細やかな表情や目線、動作などを詳細に観察しなければなりません。
「映像をしっかり観る(楽しむ)」という、何と言いますか、映画の原点に回帰しているかのような感覚。そう、サイレント映画のような。
演出がもうそれはそれは研ぎ澄まされているので、映像での説明も極限までそぎ落とされており、観るものの想像力をかき立てるのです。たまりませんねー。こういうのってもう大好き。
 

★見どころ3:衣装デザインに見入ってしまう。
衣装デザインはカルロ・シミ。「荒野の用心棒」も「夕陽のガンマン」も「続・夕陽のガンマン」も「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」も同デザイナーが担当しています。レオーネ監督作品常連さんなんですね。イーストウッドが華麗に着こなしていたあのポンチョ!!!あの強烈に印象的な衣装によって、イーストウッドの魅力が最大限に引き出されていたし、他のキャストの衣装も作品を大いに盛り上げていたと思います。リー・ヴァン・クリフの黒ずくめな衣装もカッコ良かった。
今回の衣装で印象的だったのは、皮のロングコートですね~冒頭からロングコートに惹きつけられてしまいます。めちゃカッコいい!!!
主役のブロンソン始め、全体的にアースカラーに統一されています。
悪役のピーター・フォンダは、やはり黒い衣装。クラウディア・カルディナーレのドレスは、彼女の生活スタイルや心境の変化に沿ってだんだんと変わっていく様子が良かった。見事なプロポーションなのでそれを強調するかのような肩や胸を大きく出したデザインや、

★見どころ4:楽曲の素晴らしさが、作品全体を大いに盛り上げる!
言わずと知れたエンニオ・モリコーネでございます!
ハーモニカのメロディーが忘れられない。

撮影を終えてから場面ごとに楽曲を追加するという通常の映画撮影の手法と異なり、本作品では撮影前にエンニオ・モリコーネが作曲した楽曲でイメージを膨らませたレオーネが、そのイメージの通りに映画を撮影するという製作方法だったそうです。

オリジナルサウンドトラック

『ベルリン・フィル12人のチェリストたち』

チェロだけでこの曲を表現しているのが、ほんとに凄いです。必聴です!特に、チェロによるハーモニカの音の再現がそれはもう感動的。
彼らの定番曲にもなっていて、コンサートでこの曲が演奏されると「やった!!!」と大喜びします♪

ウエスタン のトリビア

★ピーターとジェーンの母でありヘンリー・フォンダの妻は、心身を病み1950年に精神病院で自殺。ヘンリーは子供達を動揺させないために、母親は心臓発作で死んだと伝えていた。ただ、自殺の原因となったのはそもそも、ヘンリーの多忙と不在と浮気によって次第に精神を病んでいったのではと憶測され、ジェーンとピーターは父親の後を追って俳優になるが、母親の死の真相を知った二人と父親の関係は次第に悪化。
以上のような経緯から、「ウエスタン」を観たジェーン・フォンダは父ヘンリーが極悪非道な殺し屋のボスを演じた事が、自分と弟ピーターそして自殺した母たちへの謝罪だと感じ、いちファンとしてヘンリーにファンレターを出した。

★クラウディア・カルディナーレはジェーンより1歳年下。

★『ウエスタン』はレオーネの「ワンス・アポン・ア・タイム三部作」の第一作目に相当する作品。

★それまでの賞金稼ぎや無法者たちが闊歩する「ドル箱三部作」の世界観と異なり、『ウエスタン』の舞台はフロンティアが消滅しつつあった西部開拓時代末期を描いている。
主軸となるハーモニカ、フランク、シャイアンの三人のガンマンたちは、西部劇の英雄や悪漢ではなく、時代の流れに抗しきれず居場所を奪われた男たちとして描写されている。

★本作品では鉄道が彼らに西部開拓時代の終わりを告げる象徴的存在として登場。ラストシーンは圧巻。

★『ウエスタン』はそれまで映画中に女性をあまり登場させなかったレオーネが、初めて本格的に女性に焦点を当てた作品でもある。
クラウディア・カルディナーレ演じる未亡人ジルは、それまでの西部劇に多く見られたような悪党に苦しめられ助けを待つか弱い女性ではなく、自立し意思を持った物語の中心人物として描かれている。

★ハーモニカを演じたチャールズ・ブロンソンは、かつてレオーネの「ドル箱三部作」の出演をオファーされたが断っている。

★映画で悪役を演じることに難色を示したヘンリー・フォンダを、レオーネ本人が説得した。

★撮影初日、フォンダは役作りのために彼のトレードマークであった青い眼に茶色のカラーコンタクトを入れ、更に口鬚を生やしてスタジオに現れた。レオーネはフォンダの変貌に驚愕、すぐにコンタクトレンズを外すように指示。髭もなしで演じた。監督は、フォンダのそのままの容貌で悪役を演じるイメージだった。

★駅のホームでハーモニカを待ち受けるフランク配下の三人のギャングたちを、『続・夕陽のガンマン』のクリント・イーストウッド、リー・ヴァン・クリーフ、イーライ・ウォラックが演じるという計画だったが、イーストウッド多忙のため実現しなかった。

 

『ウエスタン』の関連作品おすすめ

『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェスト』

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★同シリーズ
『ワンス・アポン・ア・イン・アメリカ』

★セルジオ・レオーネ監督

『荒野の用心棒』

『夕陽のガンマン』

『続・夕陽のガンマン』

★チャールズ・ブロンソン出演作品

『レッド・サン』

『Death Wish』

『ブロンソン男気BOX』

『ブロンソンDVDコレクションBOX』

『ブロンソンDVDコレクションBOX2』

西部劇

Posted by miniaten