『ジェシー・ジェームズの暗殺』

2023年7月15日

これは最高~に良かったです!名作になりそうな予感。
ものすごく、気に入りました。
今年一番になる可能性大です。
今のところ一番です☆

で、またもやハマってしまい、長尺にもかかわらず3回も観てしまいました。
もっと時間がとれていたらまだまだ行く気はあったのですが。
それにしても、私がハマる映画ってどうしてこう長いものばかりなんでしょうか。
この作品も160分とかなり長めです。
そして、一般受けしないものが多いんですよね~これが困るんです。
何回も観たいというのに、客入りが悪いからってさっさと上映終了してしまうのです。

まずは映像美!!構図といい、陰影の描写といい、とにかく美しくてクオリティの高さには恐れ入ってしまいました。
始まったとたん、その独特なウエスタンの世界にどっぷり浸ってしまいました。
いや~素晴らしいです。
風景の撮り方も、インテリアも、衣装も、エンドロールの文字まで、すべてにセンスの良さが光ってました。
DVDはもちろん購入するつもりなのですが、やはりこういう美しい映像はスクリーンで堪能したいものです。
もっと行きたかったなあ・・。

手抜きのないセットや衣装にも目を奪われます。
リアルな”本物感”ですね。
抑えた色調、ナチュラルな質感は実に美しくて見とれるばかりでした。
シルエットの美しいコートやベスト、帽子やシャツやボタンやタイピン、それぞれが身につけているガンベルトなどの小道具、室内に置かれた、カントリースタイルの家具、装飾がほどこされた鉄製のストーブ(オーブンにもなっている)、テーブルの上の食器や食べ物、俳優がしゃべっているときに背後にチラチラと映されるキッチンの小道具たちが、もう気になって気になって!
窓ガラスもちゃんと吹きガラスのようになっていましたが、あれは本当に作ったのでしょうか。
とにかく細部までのこだわりと、その美的センスの良さにはまいりましたね。
・・・と、書いていて、あとでパンフの解説を読んでみたら、やはりそのこだわりようは恐るべきものでした。
細部どころか、観客の見えない部分にまで”本物感”のこだわりがありました。
例えば、ブラッド・ピットがつけている指輪の内側にジェシーの紋章が刻まれていたり、他にも「ええっ!そうだったのか」ということばかりで驚かされました。

やはりフツーじゃないこだわりというのは、ぱっと見たときに、それが見えてなくてもちゃんと伝わってくるのだなあとものすごく感動し、こういうことを知るとますます映画を観ることが楽しくなりますね。
それらは、プロデューサーであるブラッド・ピットによるこだわりだそうで、彼のプロデューサーとしての才能にも大変感心しました。

物語は実話に基づいており、ネタばれにもなるので詳しくは書きませんが、これはまさに”引き寄せの法則”かと思いながら観ていました。
ジョン・レノン暗殺を映画化した「チャプター27」にもリンクしているかのようで、とても興味深い内容でした。

そして、男たちの世界なのですね~。
男の憧れとは、人生の目的とは。カリスマとは。
英雄伝説がいかにして作られるのか。
善と悪が表と裏に存在したり、たくさんの要素を見せてくれた作品でした。

少々長い感じもありましたが、ゆったりと進行しながらも退屈はせず、最後までずっしりと見ごたえじゅうぶんな作品。
とにかく心理描写が深いので、俳優さんたちの個性と演技が光ってました。
ブラッド・ピットが主役で、彼の演技も大変素晴らしかったのですが、これは脇役のほうの強烈な存在感がかなり作品全体を盛り上げていました。
俳優の演技力に頼っているというのではなくて、それぞれの個性が最大限に引き出され、作品の中にしっかり生かされているのは、やはり監督の手腕ですね。
なかでもケイシー・アフレックが際立っていて、その静かな存在感は圧倒的なものがあります。
話し方が少々、フィリップ・シーモア・ホフマンの演じたカポーティに似ているなあと思いながら観ていました。
あと、お気に入りはサム・ロックウェル。
「ギャラクシークエスト」とか「銀河ヒッチハイクガイド」とか変な役ばかり観てきたのですが(笑)今回は渋い演技で素敵でした。
あと、またまたジェレミー・レナーが出てきて、あら~またお会いしましたわね~って思いましたけど、またもや彼を見直してしまいました。
先日の「28週後・・・」でもかっこいいなあ~と思いましたが、今回の役でよくわかったことは、彼は性格俳優として非常に個性的で素晴らしい人だということです。
次回にも期待しています!以前、「S.W.A.T.」でコリン・ファレルの敵役だった時は、そんなことを思ったりできませんでしたが(コリンに偏っていたため・笑)、今後は応援しちゃおう~♪と思いました。
ジェシーの兄役サム・シェパードも、こなれてて渋いです~ウエスタン似合いすぎですね。
あの時代から抜け出してきたみたいに。銃握ったまま寝るとこなんか、もう最高に素敵です。

とにかく脚本が秀逸。
観れば観るほどに凄いなあと思いました。
セリフがいいなあ~と思いながらその心地よさに酔っていました。
例えば2回目の時に冒頭の、ジェシーとボブのシーンをじっくりと見て、その抑えた中にある深いものを理解し、うーん凄いなあ・・・とうなりました。
西部劇の醍醐味って、「間」というか、「ため」だと思うのです。
日本の時代劇にも同じことが言えますけれども。
絶妙な間のとりかたと、グーーーーとためて、そして一発の銃弾で決めてくれる瞬間までの、あれがたまらないんですね。
そして、セリフでむやみに語ろうとしないところもいいんですね。
目線や微妙な表情の裏側を、巧みな演出によって描いていく、こういうところを読み取る楽しさにハマってしまうと、もう抜けられません。
セリフとセリフの間に存在する見えない言葉、そして、セリフの裏に存在する言葉。沈黙の中に存在する言葉・・・。
この作品のセリフって「○○○○○・・・。(嘘)」とか、皆で「わははははは!」と笑っているのに心は全然笑ってないな~といったシーンが多く、それが面白くてたまらないのです。
セリフや俳優の表情に「裏」があって、それがまた深くて、西部劇は好きでたくさん観ていますが、本当にこれは上質でしかも見たことがあるようで見たことがない新鮮な世界を作り上げていて、何もかもが美しく作られていて素晴らしいと思いました。

ついでなのでわりと最近のジェシー・ジェームズものをひとつ、ご紹介します。
コリン・ファレル主演の『アメリカン・アウトロー』。
こちらは同じジェシー・ジェームズでも、かなり軽めの仕上がり。
コリンがやんちゃ坊主っぷり炸裂で、可愛いのなんのって。
簡単にジェシーのことを知るには良いかもしれません。
強盗団がみんな若くて可愛くて、なかよしで、彼らの末路が今回の『ジェシージェームスの暗殺』になるとはとても思えない明るい雰囲気です。
キャストもなかなか楽しい顔ぶれ。『LOST』でロック役のテリー・オクィン、
『HEROES』でニキ役のアリ・ラーターなんかが出ていて、ドラマファンにも嬉しいです。

ジェシー・ジェームズというと、アメリカでは特に説明の必要がないというほど有名な人だそうで、ジェシーを演じた俳優は50人以上もいるとか。たくさん映画化されているので、色々なジェシーを観てみたいなあと思いました。

 

 

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