ミュンヘン
ミュンヘンを観てきました。
世界最強ともいわれる、イスラエルの情報機関、モサド。
しかしながら、今回の任務を受けた主人公、アヴナーは、人を殺したことのないフツーの人。
なぜ、この人物に・・・?
私の疑問は最後まで答えが出なかったのですが、モサドって、最強とか言われながら結構ズサンなところもあるらしい。
素人っぽいところが逆に怪しまれなくていいとか?
あるいは、ターゲットとともに抹消することが狙いだったのか・・・。
よくわかりません。この件について詳しくないので。
ところで、ザ・グリッド というTVドラマを先月スカパーで観ており、やはりテロの話なのですが、これはまったくもってアメリカ視点のドラマでした。
ドラマとしては面白く、バーナード・ヒルやジュリアナ・マルグリーズなどの有名俳優たちも出ており、なかなか楽しめる内容。
ただ、あまりにも欧米を正義化している作り方にはちょっとなあ。
しかし、宗教を利用して子供達を洗脳し、自爆テロに仕立てあげていくところ、サリンを使ったテロなど、まるでどこぞの新興宗教のごときでした。思わず背筋が寒くなる。
で、今回はユダヤ視点、モサドが主人公です。
そうかといって、どちらかの肩を持つとかそういうわけでななかった。
今、このタイミングでこのテーマで来られたら・・・。
商売としては絶妙のタイミングですね、なんてちょっといじわるっぽく考えたり。
じつを言うと、スピルバーグは苦手科目。
どうも感性がフィットしないというか、ツボに来ない。
どこをどう面白がればいいのか全くわからない。「宇宙戦争」なんて退屈で死ぬかと思ったくらい。
とくに、クリーチャー系のデザインセンスが全然ピンとこなくて、困ってしまうのでした。
私の心の芯の部分には、かなり昔からずっと絶えることのない静かな怒りが存在し続けており、その怒りが仕事の原動力ともなっているわけですが・・・。
だからもう、今こういった作品を観ても、一滴の涙も出なければ、一瞬も心を揺さぶられることはないのです。
ただ言えることは、スピルバーグという、著名な人がこのような作品を世に送り出すことで社会的影響をもたらすという部分には少しですが期待したい。
しかしながら大衆というものはいつでも、どんなことでも一夜のまつりごとに片付けてしまうもの。
それはいつの時代も、変わらないのだけれど。
でもこの作品、さすがに高品質です。
映像の完成度、俳優の使い方、どれもすごくよくできてると思いました。
ひとつイマイチかなと思うのは、心理描写。
これについては他の部分のテクニックがすごいのでカバーされてしまっているようですが、ここが実は一番重要だったのでは・・・と思ってしまったんだけど。
殺す方も人間なら、殺される方も生身の人間なわけです。モンスターじゃない。あたりまえですね。
この作品では、そこにかなり焦点を絞って観る側に語りかけてきます。
銃で撃たれた直後には皮膚に穴があき、しばらくしてから血が、その穴からドバッと噴出してくる。
壁に鮮血がビシビシ飛ぶ映像とか。
床に白いミルクと混ざった赤い血が広がっていくところとか・・・。
人が撃たれて死ぬシーンのリアルで詳細な表現はやはり、スピルバーグならでは。
こういう表現力は天才だな、と思う。
だからこれは決してファンタジーじゃない。正義の味方は存在しない。
それが現実というものだ。そうやって、強烈な映像でガンガン攻めてくる。
ナイーヴな主人公のアヴナー。
つい数分前には親しげに話しかけてきた相手を冷酷に殺さなくてはならない。それが任務だから。
ターゲットでなければ、夕食にでも誘って、語り合えたのかもしれない、そんなわりと普通の人が殺されていく。
でも、その非情な任務を続けていくうちに、精神が侵されていく。
殺人は、非合法なわけです。だけど、戦争においては合法的となってしまう。
暴力を暴力で制することはできないのに。
そして最後に、どっかの大統領みたいに正当化した言い訳をかまして去っていく、エフライム(ジェフリー・ラッシュ)。
関係ないけど、ジェフリー・ラッシュはかなり好きだ。
ぜんぜんプロフェッショナルじゃない、爆弾係のロバート。
模型オタクというか。なんだかこの人が、スピルバーグ監督自身に思えてしかたがなかった。
「俺たちは高潔な民族のはずだ」
彼にこのセリフを言わせるあたりなんかも、監督本人がそう言ってるみたいだった。
私のお気に入り、ダニエル・クレイグ。
クールなブルー・アイが素敵。実は、今回のお目当ては彼だったのです~。
スティーヴという役ですが、監督はスティーヴ・マックイーンのイメージだったとか。
ファッションにもそれが表れていて、実に楽しめた。
ジェームズ・ボンド、大いに期待してますよ!
あとすっごく気になったのは、情報屋のマチュー・アマルリック。
札束数えるところとか、かなり良かった(笑)。ネクタイもおしゃれ。
あと、料理とか食事のシーンにかなりこだわっているようで、それもなかなか良かった。
結構、野菜を使っていたようでした(笑)
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