レミーのおいしいレストラン

終盤は、泣きながらひーひー笑っていましたね(笑)。

ここには詳しく書けませんが、特に終盤の料理シーンから、あの、イーゴのシーンがこの作品の中で最高でした。
娘とも、観賞後はずーっと、あそこがいいんだよね、とかあのシーンが可笑しかった~とか、さんざん語り合っています。


私はピクサー作品、すべて観てDVDも全部持っていて、それはそれは何度も何度も観てしまいます。
何度観ても笑えて、飽きなくって。
つい先日も、とあることが気になって「トイ・ストーリー」をひっぱりだしてきて、確認のため観ていたらやっぱり面白くって止まらなくなってしまいました。

ほとんど日本語吹き替えで観たことはありませんし、娘にも小さい頃から吹き替えでは観せたことがなくって。
なるべくそのほうがいいと思うんです。
セリフの、特に笑いのニュアンスが英語でないと伝わりきれないと思うんですよね。

さてさて、ピクサーはいつものことながら、ほんっとに完璧なお仕事ぶり。
も~~~~~、ほれぼれしますね。
気持ちがいいほど完璧で。
文句のつけようがありません。
デザインも、色彩も、動きも、効果音も、音楽も、脚本も、演出も何もかもすべてが完璧に美しくて、その、美しい映像をただただ観ているということに感動なわけです。
しかしさらに、人間の心の奥に響くメッセージや、様々な挑戦や皮肉などが、素敵なユーモアとともに語られています。
そうそう、あと、照明効果も信じられないほど素晴しくて、いつもとても勉強になります。

もう、映画として完璧なのです。

今年は個人的に「ゾディアック」と並んでベストワンをどちらにするか迷ってしまいそうなくらいです。

凄すぎる!!

今回はブラッド・バード監督で、「Mr.インクレディブル」(これも最高~~)などを手がけています。
バード監督って、ほんとに天才だと思います。
実際、彼は14歳でその才能を見出されていると言いますから、まさに天才なのですねえ。
最近は、CG全盛時代、そしてモーションキャプチャー(人がドットのついたスーツを着て実写しコンピューターに取りこんでCG化する、アレです=ゴラム)が流行っているのですが、監督はとことんアニメにこだわるんですね。
エンドロールに「NOT MOTIONCAPTURE」とあって、冗談で入れてるそうなのですが、ようするに、これこそがアニメでしか作れない動きなんだぞ、というわけです。


グストーという、今は亡き天才シェフが、レミーの前にゴーストとして登場するのですが、あれって、レミーの潜在意識なのでは?と思いました。
「君ならやれる」と励ましたり、「それでいいのか?」と問いかけたり。

リングイネの声はすごく雰囲気ぴったりだなあと思っていましたが、なんとスタッフの方だったんですね~。
レミーも可愛くて(特に動きがいい!)とっても好きになりましたが、なんと言ってもこの作品で最高のキャラは料理評論家のイーゴですね。声が何とピーター・オトゥールですよ!?素敵な声です~~
イーゴの部屋の形が棺桶型というのに爆笑。ホラーのノリなんですよね、面白かったです。
ちなみに、悪役のスキナーはイアン・ホルムという、とっても楽しいキャスティング。


パリの風景、とってもロマンチックに美しく描かれていました。
正確に表現することよりも、印象を大切に取り入れているのだそうで、なんと高度なことをやってくれるのだと感心するとともに、上質なものが観れた嬉しさがあります。

この作品を観ながら、ポターの「グロースターの仕立て屋」を思いだしていました。
私も娘も、大好きなお話です。
小さなネズミたちが、小さな手で繊細で細やかな作業をする、しかも人間よりも完璧に。
こんな一節があります。
「グロースターの町の すべてのふるい家の はめ板のうしろには、ねずみたちのつかう小さなかいだんや、ひみつのあげぶたができていた。」
人間たちが気がつかないあいだに、ねずみと人間は共存していたのでした。
こういう話って、すごくイマジネーションをかきたてます。
今回の映画と非常に共通するものがありました。

逆に、この映画を観てねずみに拒否反応をするようでは、あまりにも想像力が無さ過ぎると思いますね。
もっと脳を鍛えないといけませんね。

脳といえば、レミーがイチゴとチーズを組み合わせて食べるときのシーン。
味覚という素晴しい芸術的感性、それを音と映像で見事に表現していました。
このシーンは非常に興味深かったですね。
で、そのあとに、レミーの兄のエミールで同じ事をやるシーンがあって、しかし彼は味覚が発達していなくて、何を食べても感動がないのです。
この比較は実に皮肉なものがありました。
感性が乏しいと、どんなに上質なものに出会っても、感じないというわけです。
しかも、食べ物かどうかもわからないモノでも、平気で食べられるという、味覚が死んでいる状態。
悲劇です。
もちろん、当の本人はそれが悲劇だなんてまったく気付かないわけで。

レミーのおいしいレストラン 4厨房内の細部まで凝りまくったデザインや、料理の繊細な工程など、どれも臨場感とリズム感があって、かなり見応えがあります。
いつも作品を作るときには詳細なリサーチを行うそうなのですが、今回はスタッフが実際に料理教室(それもシェフ見習いのコース)に通ったそうで、ほんとによくやってくれるなあと感心するばかりです。

でも、ただリアルということではなくて、美しくデザイン化されているとこが素晴しいのですね。

いつまでもその世界に浸っていたいような気持ちになります。
何とも素敵な時間でした。
そうそう、これなんだな、映画の醍醐味ってやつ。
とにかく大満足作品でした。

監督のコメントに「子供達の多くは、子供のためだけに作られた娯楽を好まない。
彼らはよりミステリアスで知的なものが好きなんだ。」とあって、
そのとおりです、監督。
私もそうだったし、娘もそうですね。もうそろそろ大人だけど。

ところで原題は「RATATOUILLE」。

“rat.a.too.ee”ですって・・・かわいい~