新少林寺
感動した。
「少林寺」のシリーズはTVでチラッと見た程度だったので、あまり予備知識なしでの観賞となった。
上映回数も少なかったのでどうしようかなあと思い始めていたところ、信頼している映画友が「とても良かった。終盤はすすり泣きが聞こえた」と言うので、やはりアンディ・ラウVSニコラス・ツェーだし、絶対観た方がいいな、と思った。
そんな、「泣ける映画」だったなんて少しも思っていなかったので意外だった。
スケジュールの都合で夜に観にいくことになった。
案の定というかやはり、男性客ばかり。
ジャッキーは、寺の厨房係。
料理人としての日常スタイルを取り入れたアクションが面白く、とても見事だった。
超特大中華なべに人を入れて放り投げる!とか、麺の生地をこねるように人間をぐるぐるとテーブル上で回したりとか、シャベルのように大きな・・・あれは”おたま”だろうか?・・・を武器に振り回す。
やはりリズムが良くて、本当にきれい。
一瞬も見逃さないぞと、瞬きする瞬間すら惜しいような気分。
もっと見ていたい!と思ううちに終わってしまったが。
しかし短いシーンの中に、ギュッと質の高くて濃いアクションが凝縮されていて実に楽しかった。
それにしてもアンディ・ラウ、全く歳をとっているように見えない。
ジャッキー・チェンもニコラス・ツェーも、それに出演者のみなさんお肌のキメ細かくて美しい。
アンディ・ラウは髪があってもなくても美しい。
むしろ髪剃った方が整った顔の造形がいっそうひき立って見えた。
ニコラス・ツェー、悪役っぷりは「PROMISE 無極」の時の伯爵を思わせる雰囲気。
だんだん壊れていく様子が面白くて仕方がなかった。
こういう役が似合うんですねーニコラスって。
“お色直し”も見所で、終盤でのやたらゴージャスな衣には思わず笑ってしまうが、余裕の着こなし。
あと、たれ下がる前髪がポイントです。
楽しそうに悪役を演じるニコラスの様子を嬉しく観ていました。
彼はこの役を大いに楽しまれたようです。
実は最近「密告者」を観たばかりだった。この時のニコラスはスキンヘッズだったので今回とまるで印象が違った。いい人だったし。
脇をかためる武術の達人たちも素晴らしい。
子供たちもすごい。
見事にアクションをこなしていた。
撮影はとても過酷だったことは、映画を観ていてじゅうぶんにそれが画面から伝わってきた。
中国映画ではよくあるのだけど、吐く息が真っ白で本当に寒そうなシーンがあって、大変そうだなと思う。とにかく寒そう~なシーンが多い。あとから裏話を読むと実際、過酷な現場がかなり多いようだ。
また、寺のセットは本物そっくりに作られたものだそうで、「本物よりもお金がかかっている」という冗談も出るほどの出来栄えとか。
CGやワイヤーをやたらに使わないで撮影しているところも、良いなあと思いつつ、やはり実際の現場は大変なんだろうなと思った。
こちらはファン・ビンビン。
アンディ・ラウとは夫婦役を演じており、はかなげな美しさが心に響く。
精神性に重点を置いた内容で(実際の史実とは異なるようだ)、人間の愛や業といったもの、また、人と人との縁について。慈悲や改心・・・。
人の生き様、死に様について深く語られており、カンフー映画にありがちな勧善懲悪的な描き方ではなく善悪についても深く考えさせられる脚本になっていた。
とくに、エンディング曲の歌詞も良かった。少林寺の心が歌われていて、歌詞の字幕があったのも嬉しかった。
何と、アンディが作詞し歌っているというので驚いた。
彼は書も達人だし、何事においても芸術家なのだと改めて感心してしまう。
監督ベニー・チャンは、本作のテーマを「心」だと。
彼はジョニー・トー監督の下で働いていた人なんですね。
アクションの見せ方や、映画作品としての華やかさもきっちりおさえた上で精神性もしっかりと語ってくれるところなんて、なかなかの手腕だと思った。
「少林寺」シリーズ、観なくては。