潜水服は蝶の夢を見る

大好きなマチュー・アマルリックが主演!!!というので、
それはもう公開を楽しみにしていたというのに、結局なかなか行くことができず、もう上映終了が迫ってきてしまい・・・。

で、あわてて昨日の夜、新宿までひとっ走り。観てきました。
都心にはすぐ出られるところに住んでいるので、これはとても便利です。
でも、たとえ郊外に住むことがあっても、映画館が近くにないとダメだわ、きっと。

さてこの作品、とても良かったです!
30個くらいの賞を受賞しているんですねえ。スゴイです。

しかし・・・とにかく私は始終冷静ではありませんでした(笑)。
初めはなかなかマチューの顔が出てこなくて、イライラ・・・(笑)。

まさかこのままずっと、マチューのつぶやきを聞きながら終わるのか?と思いつつ耐えていると・・
やっと出てきたときはもう、大感激!
かわいい!おしゃれ!キュート!演技上手い!
知的で色気のある伊達男、ジャン=ドミニク・ボビー役はぴったりでした。
これは実話であり、ジャン・ドミニクの職業はELLE誌の編集長という、まさに時代の先端を行く人だったのですね。
車いすになってからは、目だけで演技するシーンが多い、というか表情は麻痺して動かないので、目の動きと表情にすべてが語られていくのです。凄かった。

観ながらすぐに「ジョニーは戦場へ行った」を思い出していました。
枕に頭を打ち続けたジョニーと、とても似ているなと思いました。
ただ、ジョニーの場合は戦争がその背景にあり、内容は反戦でした。
20年以上も前に読んだ本でしたが、その奥深い物語は今でも私の心の芯に強く残り続け、揺さぶり続けているのです。

ジョニーは反戦映画だったのですが、つまり今回とは背景というか意味が異なります。
それで、私はどうも病気の話は苦手なのです。
苦手な第一の理由。
・・・つい、頭の中でいろいろ考えてしまうのです・・・。
食事のこととか治療のこととか、いろいろね。
今回の映画の主人公、ジャン・ドミニクの病名は脳梗塞。
意識ははっきりしているけれども、全身が麻痺で、片目だけが動かせるという状態です。
その、片目のまばたきによって、言葉を伝え、本を出版したというお話なのですね。


ジャン・ドミニクの妄想シーンの表現がものすごく面白いのです。
これは、シーフードを浴びるように食べているシーン(妄想)。
ああ・・・、やはり魚介類が好きだったのね・・・。

病気の映画が苦手なもう一つの理由。
大抵は感情面、心理面の描き方にどうにもこうにも疲れてしまうので(狙いすまして観客を泣かせようとしたりとか、そういう表現は気持ち悪いと感じる)、普段はあまり観ないようにしています。
この作品も実は、マチューが出ていなかったら観に行かなかったかもしれません。
でも、観て良かったです。
マチューのおかげですね。ありがとう、マチュー!
ありがちなお涙頂戴的な表現は見られなかったし、それよりもどちらかというとシニカルで、冷静で、それでいて人間味のある温かい作品でした。

配役も素晴らしくて皆さんとてもいい感じの表情を持った人たちでした。
映像はとてもセンスが良くて、すごく新鮮な感覚でした。
監督の演出力のうまさも加わって、とても上質な出来だと思いました。
シュナーベル監督はてっきりフランス人かと思っていたら、何とニューヨークはブルックリン生まれというから驚きました。
すごくフランス的なエスプリが効いていていいなあ~と思いましたのに。
さすがに現代美術家だけあって、映像の作り方がそれはそれは素晴らしかったです。


この文字を使って”会話”をします。
使いやすいように、アルファベットを並び替えてあるのです。
しかしこの方、美人さんですね~
治療師さんたちの努力と忍耐力、前向きな姿勢にも感動しました。

生きることの素晴らしさと、尊さ、そして人間の可能性について、あらためて考えさせられました。

「麻痺していないものがある・・・想像力と記憶力だ」

この台詞がとても印象に残りました。

人生は一度きり。
どんな人生を生きるのかは自分次第。
皆、わかっているようでいてわかっていないかもしれません。

シュナーベル監督の次回作、どんな作品かしらと、とても楽しみ。素晴らしい表現力の持ち主です。
マチューのジェームズ・ボンド相手の悪役も、早く観たいなあ。大いに期待しています。