英国ロイヤル・バレエ団「うたかたの恋」

2021年6月20日


映画作品のほうはどれも観ていないんですよね。
で、詳細はわからないままにバレエ鑑賞となりました。
これは、ハプスブルク家の皇太子ルドルフの心中事件マイヤーリング事件をもとに作られたバレエ作品で、実話の重みとともに、全体的に暗く、最初から最後までずーっと重苦しい雰囲気、ひたすら悲劇なのです。
そして、人間の内面をえぐるような深い描写に、心が揺さぶられ・・・、けれどもたった一度の鑑賞では消化しきれないほどの要素が全3幕に凝縮されているんですね。壮絶でした。
なんだか、ルドルフが、先日観たマシュー・ボーンの白鳥の王子とイメージかぶるなあ・・・と思いながら観ていました。居酒屋のシーンもあるし。

振付はケネス・マクミラン。踊らないで演技するような場面も多く、まるで無声映画を観ているような感覚になりました。
席が3階で遠かったのがやはり残念なところ。
それぞれの登場人物の細やかな表情を、オペラグラスでは追い切れないんです。
音楽はリストの曲を編曲していて、とても劇的。
静けさが続いたかと思うと劇的な激しいパ・ド・トゥが入り、息をのむ。
そんな感じのメリハリのきいた振り付けが独特でした。

ルドルフはエドワード・ワトソンで、とても美形で繊細な雰囲気、はかないルドルフの人生を情熱的に表現していて、本当に最後は感動しました。
マリーはマーラ・ガレアッツィ。
少女的な雰囲気がよく出ているというか、そういうのをもともと持った人なのかな、と思い、「オネーギン」のタチアナもすごく似合いそうな感じでした。

衣装デザインはかなり装飾的で、19世紀当時の雰囲気をできるだけ生かしているようで、ロングドレスの人も多かったです。
色彩を赤、茶、黒に絞っていて、しかも渋めの抑えた色調でアンティークな雰囲気がなんともいえず素晴らしかったです。
特に2幕の居酒屋のシーンの娼婦たちの衣装がカッコイイ!「NINE」みたいでした。

内容的にドロドロしてるはずなのですが、ダークな美しさに虜になってしまう、ちょっと危険な香りのする作品。
英国ロイヤルの気品でまとめていて、とても素晴らしかったです。
ヨハン・コボーのルドルフも観てみたいものです。
(もうちょっとチケットが安ければ行ってるんだけどなー)

そうそう、映画のほうも、観なくては。