4分間のピアニスト

2021年2月18日

先ほどの「僕のピアノコンチェルト」の中でちょっと書きましたので、続けてこちらも書きます。
娘と2人でてくてくと銀座1丁目から4丁目まで歩きまして、続けて観賞しました。

さてこちらは「闇のピアニスト」ですね~。

この作品を観ながらなんとなく「リベリオン」を思い出していました。
「リべリオン」の中では、感情と芸術との深いかかわりについて表現されていたところ、非常に興味深かったです。
最も感動的で印象に残っているのは、主役のクリスチャン・ベイルがベートーヴェンの第九のレコードを聴くシーンで、あの最初の一音を聴いたときのクリスチャンの表情が忘れられません。
まさに宇宙とつながるかのような一瞬。
ほんとうに感動的な一瞬。


で、「リベリオン」の中で表現されていることと、この「4分間~」で表現されていることが、とてもよく似ていると感じました。
芸術とは自由な精神によって生み出されるのだということ。
これは先ほどの「僕のピアノコンチェルト」でも感じたことで、娘もこれについて感想を語っておりましたが、2つの作品に共通していたテーマはやはり「自由」でした。

2つとも良い作品だし、好きですが、比べてどちらが好きかと問われたら「4分間のピアニスト」を選びます。
やはりこういった、甘口でなくキリッと辛口の作品が好みですね。

全体に流れている、ピシッとした緊張感にもドイツらしさがあって良かったですね。

そう・・・。
いつどんなときでも魂が自由なら・・・
いつでも、どこにいようとも、崇高で美しい芸術とともに生きることができるのです。

「人は内なる自由にいかにして到達するのか」
これはクラウス監督の言葉。
ここが、この映画の核となるものだったのだと思いました。


無実で囚人となった女性が、ピアノ教師によって導かれて行く。
このピアノ教師は実在の人物をモデルにしたそうです。
彼女には、決して多言できない暗い過去があり、そのことで心に深い傷を追っていました。
しかし生涯、芸術とともに生き、追及することをし続ける、それが彼女の生きる支えとなっているのでした。
演じるモニカ・ブライトロイさん、大変素晴らしいです。
立ち方や歩き方まで、ピアノ教師の人生がそこに本当に存在するかのようで。
非常に深みのある演技に引き込まれました。
あれ?ブライトロイって・・・?と思ってたら何と、モーリッツ・ブライトロイのお母様でした!
しかも「ラン・ローラ・ラン」で共演してるのです。

クラウス監督はまた、こうも語っていました。
「自由が最もその効果を現すのは、人間にとって最も非実利的な領域なのだ」

ただただひたすらに、無心にピアノを弾き、誰かに伝えるということではなく、弾くことで自分と向き合い、ぶつかり合い、真の自分に目覚めていく。
自己の内面の芸術と触れ合うことがすなわち自由ということなのだろうと、思いました。

主役のハンナー・ヘルツシュプルンクさん、映画の中では汚れていて、荒々しく、鋭い目つきで凄みがありましたが、素の彼女の写真を見たら、とーっても女っぽくて美しい人で、びっくりしました。
しかし目の鋭さはそのままでした。知的で美しい素敵な女優さんです。
きっと撮り方も上手いのだと思うのですが、実によくピアニストらしい雰囲気を出していました。
勘が良くて才能のある女優さんや俳優さんて、今までやったことがないことを短期間で習得して、それをほんとうにそれらしく自然に演じてしまうところが凄いなあと思います。

もちろん音楽のほうは非常に楽しめましたね~。
バッハやシューベルト、ベートーヴェン。
印象的だったのはモーツァルトのピアノソナタの使い方。
主人公のジェニーが、オルガンでロック調の曲を弾くところもまたなかなか良かったです。
要所要所で、音楽の使い方が実にうまくて、監督の音楽センスの良さをうかがわせます。

最後のコンサートに使われているシューマンのピアノ協奏曲は、クラシックの概念を壊すという感じの、とても意外なタッチの曲に仕上がっておりました。
即興的、大胆で斬新でエネルギッシュな演奏を披露してくれました。
個人的には正統派クラシックが好みですが、なかなか面白かったです。
というか映画の内容上、このアレンジがぴったりだと思いました。
ジェニーらしかった。とても。

いや~ドイツ映画。いいですねえ。
DVDは絶対買い!です。

もちろんサントラも即、購入して、聴きまくっていました。

ついでにこちらもおススメしておきます。
すっごい面白いですよ~~

トム・ティクヴァ監督、ほんとにもー、最高!
ちなみにローラ役、ジェイソン・ボーンの彼女役です。
私はボーンのシリーズより先にこっちを観ていたので、ボーンでご登場の時は「あっ!ローラ!」って思って、いいキャスティングだなあ~と思いました。