僕のピアノコンチェルト

ちょうど銀座で歩いてすぐの劇場で上映していた「4分間のピアニスト」を同じ日に観たので、両方を比較することができて興味深かったです。

かたや光のピアニスト、かたや闇のピアニスト。
これは娘が語った言葉を使わせてもらいました。
もちろん「光」は、この映画の少年ヴィトスのほうです。


偶然にも両方の作品に、メインでシューマンのピアノ協奏曲が使われていたことに驚きました。
同じ日だったのでさらに驚き。
しかも同じ曲を使ってはいるけれど、その使い方がまったく違っていることもおもしろかったですね。

子供が主人公の映画なので、安心して観ることができますね。いろんな意味で。
ちょっとファンタジックなところも感じられて、人間の「善」の部分に共鳴させる物語でした。

さてスイスといえば、ル・コルビジェですね。
好きなデザイナー&建築家ということもありますが、画面に出てくると「おっ」なーんて、非常に目を引きますね。
コルヴィジェのグランド・コンフォートに、バーバリーカラーのストライプのジャケット着用で座ってるヴィトスの母、素敵でした。
コルヴィジェの家具なんかをフツーに置いてあります、って雰囲気がおしゃれです。
(これって日本人である私の勝手な思い込みかも・笑)

あとヴィトスの両親の家は、やはりコルビジェ設計のユニテ・ダビタシオンによく似てたけど、あれはスイスにもあるのだろうか。
フランスとドイツにはあったと思うのですが、もしかするとよく似た建築か、あるいはフランスで撮影したものなのか・・・不明ですが気になるところです。
DVDで確認したいですね。

・・・って。
音楽じゃなくてついつい建築やインテリアがやたらに気になった作品でありました。
インテリアというかセットの趣味が良いと、即、監督のファンになってしまいますね。
俳優さんのうしろにチラチラと映っているものが気になるものです。
しかし、この「気にさせてくれる」ってところがまた嬉しいわけです。

ヴィトス(テオ・ゲオルギュー)がなんといっても美少年で可愛いのです。
頭が良くってちょっと生意気なところも、ひたむきさも、芸術に対する真摯な姿も・・・、彼を見てるとなんだかほっとします。
コウモリ好きで、自室にポスターが貼ってあったり、彼女にプレゼントされたコウモリの人形に「アブラハム」なんてキュートな名前をつけているところなんかも可愛かったですね。
ちなみに私もディズニーランドで購入した、こうもりのぬいぐるみを大切に所有しておりますので、ヴィトスの大切にしている姿に妙に共感してしまいました(笑)


またおじいさん役のブルーノ・ガンツもすごく良かったです。
いい俳優さんですね~。素敵です!
彼は最近ヒトラーを演じておりましたが、表情とか話し方とか、すっごくリアルで上手かったですね~。
作品的にも静かな怖さと、人間の弱さやはかなさ、悲しさなどが印象的でした。
今回のおじいさん役も、すごくハマっていて、ヒコーキマニア、ってところがまたおもしろかったです。
が、それにしても男性というのはどうして乗り物が好きなのでしょうね?(永遠の謎~)
おじいさんの田舎スタイルの家がいいんですよね~。
雨漏りしたり、少々くたびれた家なのですが、そういうところがまた味だったりして。
ゴム製のブーツはスイス製でしょうか、とてもおしゃれでした。
おじいさんの帽子もいいなあ♪
おじいさんの家では、2人でいつもスパゲッティを食べているのもなんだかほほえましかったです(笑)。

自由。魂の自由。
自由がなければ芸術は表現できない。
芸術を語るときにこのことからは決して遠ざかることはないんですね。

空を飛ぶコウモリと飛行機と、そして自由な魂と芸術の心・・・がうまい具合に重なっており、そのタッチもどこかほのぼのとしていてほっとさせらる感じでした。

音楽的には「4分間~~」よりも「僕の~~」ほうが、定番クラシックを守っていて、正統派好みとしては良かったです。
クラシック好きにはとても楽しめる選曲。
シューマンのピアノ協奏曲をじっくり聴かせてくれたのがうれしかったですね。
「4分間~」のほうはストーリー上、クラシックの概念を飛び越えるところに意味があったので、使い方が違う点で面白かったです。

ピアノが主役だけあって、モーツアルトのレクイエムが途中からピアノに変わるところなんか、好きですね。
バッハのゴールドベルクを使っていたのも嬉しかったし、音楽面で非常に楽しめました。

実際にテオ・ゲオルギューは2004年にこのシューマンのコンチェルトでコンサートデビューしているんですね~。
シューマンを選んだのは、ちょうど練習中だったからとか。いろいろとシンクロが楽しかったです。

サントラも良いです。
劇場で観賞後にすぐ購入して帰りました。
帰宅後に聴きながら、余韻に浸るのが好きです。

ついでなのでおススメしておきますね~
このほかにも、スタンダードエディションもあります。
ブルーノさんがほんとに渋いっす。
映像もきれいで、作品的にも上質。
トーマス・クレッチマンが出てるところもポイント高い(笑)