アイ・アム・レジェンド


実は、ほとんど期待していなかったのですが、すごく良かったのです!

私にとっては「エイリアン」以来(そんなに?)のA級SFホラーって感じでしょうか、とてもよくできてました。上質感が非常に心地よいです~。
フランシス・ローレンス監督、趣味の良い人だなあと思いました。
「コンスタンティン」も好きな作品なので、もうすっかりローレンス監督のファンになりました。
エレガントな趣味の良さが、全体の雰囲気を上質に演出しているのかもしれません。
怖さや不気味さの中に美的センスが備わっているというのは、大変素晴らしいことですねー。

しかし実はこの作品、予告編を最初に観た時は、うーん、なかなか面白そうだけど、よくあるハリウッド的パニック映画(観終わるとすぐ忘れちゃうような類の)なのかな?行かなくてもいいかなあ・・・なんて思っていたのですが、劇場へ何度か行くうちに、予告編の内容が変わってきて、ゾンビらしきモンスターが登場するではないですか。
へ~、ゾンビかあ~どんなゾンビかなあ~・・・と、いきなり興味度がアップしてしまい、がぜん行く気になってしまったのでした(笑)。
ハリウッドならではのSF大作でありそして上質感もあり、趣味良くA級作品に仕上がっていて、観終わった時の満足感がありました。
ローレンス監督は、ミュージックビデオを撮っていた人なので映像感覚のセンスの良さは抜群。
そしてLA生まれのためなのか、ハリウッド的な映画作りの、良い方向への解釈をじゅうぶんに理解している感じがしました。

さてこのゾンビは、死んで生き返るという、死体が歩いて来るやつではなくて、あくまでも感染者らしい。つまり”病気”なのですね。
どうやら治すことができるかもしれないらしく、ウィル・スミス扮する主人公のロバート・ネビルは、 治療のための研究を続けているのです。
「地球最後の男」は私は未見なのですが、解釈はかなり近いらしいです。
冒頭のシーン・・・無人、廃墟と化したNYの街の光景は、「28日後」での冒頭シーンを思わせます。
28日後はロンドンで、あちらはCGはたぶん使っていなくて早朝に撮影したとか聞きました。
イギリスっぽい雰囲気が良かった作品です。
今回のアイアムレジェンドは28日どころではなくて、もうすでに3年が経過しているので、アスファルトから草が生え放題になり、何と鹿やライオンが生息しているんですねー。
この表現はとても楽しかったですね。
人工的な街を、自然が侵食していってるという、自然の力強さを感じさせるものがありました。
私と娘が”小さな幸せ”と呼んでいる、小さな小さな自然も、好きにさせておけば、あんなふうになるのかなあ・・と、想像すると楽しかったですね。
鹿は森林地帯に生息し、ライオンは草原というイメージがあるのですが、そういう彼らが同じ空間に存在するというシーン、超現実的世界な感じで面白かったです。
さらに、そこらじゅうに放置自動車があってその屋根の上をドスン、ドスンと走っていく様子、車の影から突然現れるライオン。
とってもシュールで素敵な雰囲気のシーンでした。
猛スピードで疾走する赤いレーシングカーはフォード社シェルビーGT500っていかにもアメ車だけど、スピンするとこなんか実にクールでした。
こうしてひとつひとつのシーンを思い出してみて、つくづくいいなあと思う、ローレンス監督なのでした。
少々話がそれますが、藤子F不二雄氏の漫画で「みどりの守り神」という作品を思い出しました。
ローレンス監督の言う”自然主義的アプローチ”は、シュールで美意識と説得力のある映像世界を作りだしていました。


ネビルが犬を連れているというのも良かったですね。
「シュレック」を引用しておりましたが、シュレックとロバの関係が、ネビルと犬のサムの関係に重ねていて、シリアスな話の中に一瞬、ほっとなごませる演出がいいんですね。

NYの街の中の看板で、「スーパーマン」と「バットマン」が合体したようなデザインのがあって、あれはジョークなのかなあ?と思っていたら、「スーパーマンVSバットマン」ていう企画があるらしいんですね。
で、今回登場した看板はもしかすると「今度これやるからね~ヨロシク」という、宣伝だったのかも。本当なら、楽しみ!!

映像だけでなく、ストーリーの展開や、人物描写、心の深い部分の描き方なども、非常によく作られていて、物語にも引き込まれました。
ウィル・スミスの演技も良かったですね。
たったひとり(犬の相棒は一緒だけれど)孤独に耐えながら日々、同じことをきちんと守り、続けていくネビルの姿。
もはや、希望など簡単に持てなくなってしまっていたのかもしれません。
神なんかいない、って思うくらいショックなことばかり起こりすぎて、精神のバランスを保つだけで精いっぱいな雰囲気で、それでも日々生きて、研究を続けていたネビルの姿には心打たれるのです。
ウィル・スミスはそういう感じをとてもよく演技してるなあと思いました。
ちゃんと食事を作り、犬と会話しながら食べるネビルの様子はまるで何も変わらない普通の日常的な光景。
地球でたったひとりになっても、規則正しい生活スタイルを保ち続けているネビルに、とても人間らしさを感じて素敵に思いました。

インテリアがまた非常に良かったです。
とても趣味よくコーディネートされていました。
キッチンの棚にぎっしりとストックされた食品が綺麗で、気になりました。
あとローレンス監督の表現世界は、なかなかどうして、結構精神世界系だな!と思って、興味深かったです。
ネビルの家の壁にかかっている絵画も気になりました。
ゴッホの絵、2枚だったかな?それにルソーの「眠れるジプシー女」など。
そして蝶のシンクロしてるところ、すごく感動してしまいました。

リメイクが盛んなこの頃ですが、こういう上質なリメイクなら、大歓迎。
もっと作ってほしいなあ、なんて思ってしまいました。