実は深い感動が潜むハートウォーミングな『ラースと、その彼女』

2023年7月15日

と~っても、良い作品で、感動しました!
ハートウォーミングでありながら、ただ、いい人たちだね~では終わっていなくて、実はとても深いものがあるなあと思いました。

ライアン・ゴズリングは、この作品でアカデミー賞主演男優賞にノミネートされていたほどで、その演技には本当に心打たれました。

ラースは、結局、ビアンカというリアルドールを通して、自己再生すると共に、町のひとたちの心の中にも、決して忘れられない何かを残すのです。

演出や脚本もとても良くって、特に、季節が冬、っていうのがまたいいんですね。
雪が降ったり、ドアを開けて外に出ると「おお、寒い!」っていう感じで。
だけど寒い冬には、ふっくらしたダウンのコートや手編みのブランケットやセーター、温かみのある色合いが存在感を強くするのです。
そういった温かさを演出する小道具がたくさん使われていて、おそらくそれらを観ているだけで視覚的にもなごむのだと思います。

そういう意味で、全体をとおしてピンクが多く使われていました。
例えば、ビアンカが泊まる部屋なんかピンクで統一されてるし、他にも登場人物の服や、小物、あちこちにピンク色を使っていました。
ポスターやパンフにも。

シュタイナーの本に書かれていたこと、ピンク色は母親の胎内の色、というのを思い出しました。
温かみのある、やわらかいピンク色、癒しの色ですね。
ピンクの部屋はラースの母の部屋だったというのも、意味ありげです。

現実的にはどうなの。。。ってことはさておき、ドール(ビアンカ)とライアンのやりとりはとても面白くて、なぜか観ていて癒されるんですね~

一見、変?な人なラース。
考えてみれば、ものすごく周囲に迷惑かけまくっている人物なんですよね。
でも、周囲の人たちはみんな、ラースのことが好きで、彼のために一生懸命になる。
それはきっと、ラースという存在を心から信頼していて、彼の中に希望を見出したいのかもしれません。
誰かに何かをしてあげたいという気持ちは、みんなの中にあるんだなあ……としみじみ思うのでした。

キャスティングもすごく良くって、皆さん達者なのです。
特に、書くまでもないことですがライアンは凄い!!
すっかり私も、ラースがんばれ、って応援したくなるし、ラースのために何かしてあげたくなってしまいました。

ライアンは本来とてもスマートでスッキリ美形な人なのですが、今回の役作りでは髪型やひげ、体型、身のこなし方など、すごくリアルにやっていて、初めてこの作品で彼を見た人は、ライアンってこういう人、って思ってしまうかも。
あと、彼のカントリーっていうか田舎臭いっていうかなんともいえないファッションも、バッチリそういう雰囲気で着こなしててスゴイと思いました。
一番「なんじゃこれ」と思ったのが花柄のTシャツっていうか肌着?あれは男物なのか……?しかもその上から茶系のおっさん風カーディガンをはおっていて、んで、ボサボサの寝起きヘアーにヒゲ。。。さすがに気持ち悪いほどぶっ飛んでるなーと思いました、はい。

ラースの兄役には、ポール・シュナイダー。
いい~味出してましたね~。困ってる顔が素敵(笑)。
『ジェシー・ジェームズの暗殺』でもすごく印象的でした!
妻役にはエミリー・モーティマー。上手いですねー、いつものことながら。
彼女のセリフにはいくつか気になったものがありました。
「ひとりでいられる人なんかいない」とかね。

ここにもピンク!
ラースが無意識に選んでるのです。

後方の彼女は仕事場の同僚マーゴ役のケリ・ガーナー。
彼女のファッションも奇妙でしたねー。マーゴ自体も何か変なんですが。
白いタイツに、子供っぽいミニスカ、量販店仕様っぽいコートをだらしなくはおって、髪をヘアピンで留めて、手にはテディベア、ってまるで小学生のような、意味不明なセンス。

ビアンカも、最初来たときは黒の網タイツにエナメルのブーツにミニスカで都会的だったのが、いきなりグレーのスウェットにピンクのセーターを着せられたりしてて(笑)。
監督さんの演出もあるのでしょうけど、この衣装担当さんはかなり面白いなーと思いながら観ていました。

女医さん役にはパトリシア・クラークソン。
知的で、綺麗な人で、優しそうで、役にぴったりでした。
それにしてもいい先生です~

サントラも購入して、ふとした時によく聞いています。
ギターの雰囲気とか、なかなか良かったのです。

グレイグ・ギレスビー監督は、今まではコマーシャル作品を作っていた人で、映画のほうはまだこれからということですが、次はどんなことで楽しませてくれるのかと、期待しています!

もう、一生変わらないのかも……
って思ってしまうことってあるけど、でも、きっと変わるんだよね。
そんな感じの、希望みたいなものがこの作品には込められている気がしました。