超ゴージャスなミュージカル『NINE』

2023年6月8日

こちらも、公開して間もない頃に大きいスクリーンで観ました♪
言うまでもなく豪華絢爛。
まばゆいばかりの贅沢の極みでした。

現実と非現実の世界が交差してシーンが展開していくのは、私にとってはボブ・フォッシーの『オール・ザット・ジャズ』を思わせる映画でしたが、元ネタとなっているのはフェリーニの『81/2』なんですね。
’60年代のオマージュ、自動車やファッションなどが楽しかったです。
グイドの乗っていた車の色も形もとても可愛かった。

本当にため息ものの、ワクワクするシーンがちりばめられていて、素晴らしかったです。

ストーリーは、主人公グイドの妄想と現実を行ったり来たりするので、話をわかろうと真面目に追いかけているとかえってわけわかんなくなりますねきっと。
こういうタイプの作品の場合、瞬間的に変化するシーンを感覚的にとらえて観る、という感じが求められる気がします。
そういう感じで観ていくと、だんだんと芸術家の頭の中に入り込んだような感覚になれて、とても楽しいのです。
しかし、タイトルのNINE=9が実はこの物語のキーワードになっていて、そこから読み解いていくと、とても深い意味がこめられていることがわかるのです。
脚本は故アンソニー・ミンゲラなので、かなり人物の深い部分まで描かれていたりするのですね。
9が何かという解説はこの場では控えておいて、簡単に言うと、その人の(この場合はグイド)原点に帰った時、つまり本質的なものを受け入れていった時に、人生において自分の本当にやりたかったこと、なすべきことが見えてくる、という感じでしょうか。
それまでには色々と右往左往して、悩んで、ぶつかって、辛いことも悲しいことも起こるのだけど、でもそれはやはり必要なことなのだと。
人が中年にならないとわからなかったことや、見えてこないものとかがあるんですね。
そして、そういう年齢になった時に悩むこととか。
特にグイドは創造性における壁。
そこにぶちあたるところからこの映画は始まります。
そして、彼にとって女性(主に女優)は、クリエイティブな部分を活性化する元で、根源には母の存在があるのですね。
複数の女性が登場しますが、それぞれに担当というか役割が決まっているのです。
で、そういう感じの、ひとりの芸術家の半生をロブ・マーシャル監督の最高級のセンスの演出で魅せてくれるわけです。

映画の撮影所のセットが大変素晴らしかった!
足場パイプの硬質で冷たく現代的な素材と、ローマ風の古めかしい円柱の組みあわせ。

照明の使い方もお見事としか言いようがないですね。
特に、周囲を思いっきり暗くしておいて、人物にスポットライトを当てたりと、舞台っぽい演出が良かったですね。

ダニエル・デイ=ルイスの飄々とした風貌がなんともいえず軽やかで、グイドは悩みに悩んではいるけれども、そんなところも全ては人生を楽しんで生きている印象を受けました。
結局、悩まないと人間て成長しないのです。
ところで大変貴重だったのは、ダニエルの歌です♪

ファーギーの迫力ある赤黒のシーンがあまりにも美しくてカッコ良くて、この作品の中では一番好きでした。
赤と黒に統一された衣装が素敵すぎでしたし、撮り方がすごく良かったし、あのシーンだけ何度観てもあきないですね、おそらく。

この映画は、衣装だけ細かく観察していってもそれだけで楽しめます。
特に下着ファッションが素敵です。

私が2番目にお気に入りのシーンとなり、予告編でもすごく気になっていたのがケイト・ハドソンのシーン。
ファッションショーのイメージで構成されていて、このシーンで使われていた音楽もとても覚えやすくて、あとで鼻歌を歌ってしまうくらいでした。

イメージカラーは白、グレー、シルバー。
キャラによってシーンのイメージを変えているのも楽しかった。

私は、ラブコメ女王のケイト・ハドソンしか観たことがなかったので、この彼女にはびっくりしました。
あんなに歌って踊れる人だったなんて。
本当にはじけててカッコ良かった!

ニコール・キッドマンは足を出さなかったんですね~(笑)。
しずしずとドレスを着て……美しかった。

クラウディアという役でしたが、クラウディア・カルディナーレというよりは「甘い生活」の雰囲気。

ジュディ・デンチのクールさも良かったですね。
先が見えなかろうがなんだろうが、淡々と自分の仕事をやってて、合間にグイドの愚痴聞き役もやっててね。

アカデミー賞助演女優賞にノミネートされていたぺネロぺ・クルス。
見事なまでに豪華な、華のある色気でした。
このシーンのピンク色がとても綺麗。
カルラの夫が現れるシーンがとても心に残りました。

ぺネロぺさんも凄かったし、あと、グイドの妻役、マリオン・コティヤールの豹変ぶりと色気にも驚きで、ド迫力。そしてものすごく魅惑的でした。
マリオンさんのシーンもすごく良かったなあ。

うーん……要素が多すぎて、1回の鑑賞では消化しきれないし、それにそんな薄い映画じゃないですね。
何度も観て、感覚刺激したい作品です。

鑑賞後すぐにサントラを購入して、聴きまくっていました。
これはぺネロぺさんの足です。