ドッグ・バイト・ドッグ

参った!!
始めから終わりまで、ずーっと心臓どきどきしっぱなしでした!
かなりハードな香港ノワール。
「エレクション」より数倍スゴイです。
熱いです。血がたぎってます。
気を抜く暇も与えられず、容赦がありませんでした。
ゆるんだ気分は叩き直してやる!という感じですね。

まずはこのエディソン・チャンの変貌ぶりに、もー、びっくりするやら感動するやらで、
観終わってもずーっとドキドキしていました。
映画でこんな気分て最近なかったなあ。。
暴力描写が苦手な人には不向きですが、ジョニー・トーより熱かった!
これを観たせいで「リトル・チルドレン」なんてヌルすぎるなーと思いました。

「ダニー・ザ・ドッグ」にも似た設定でしたが、あんなに洗練された世界ではなく、あくまでも野性的で土っぽい感じです。
ずっと画面がカーキ色だったような気がします・・・

生きることはハンパじゃないんです。遊びじゃありませんよ、ってね。
そういう基本的なことを、この作品で再認識できて嬉しかったです。

ズシリと重みのある力強さに、身体が熱くなりました。
ヌルイ感動物語なんかにちっとも感動しないかわりに、こういうハードボイルドなほうがう~んと好きですね。

でも、ヤワな根性で観ると、ガツンとやられますねきっと。
ハンパな気持ちでは観れないです。
極限状態の中で、生きる、ということを根底から考えさせてくれる作品でした。

いつもは端正なナイス・ガイのエディソン・チャンの演技が素晴しいのです。
体中に溢れる生きることの壮絶さ、野犬のような獰猛さ、そして痛いくらいの生への執着を見せてくれるのです。

エディソンはいつもはこんなにスッキリ美青年。
とくに、冒頭からしばらくの間、ずっとセリフがないというのがすごく気に入りました。
また、全体を通して彼はほとんどしゃべらないんですが、
それが彼の野性味をよくあらわしていて、本能だけで動く動物の雰囲気でした。
でもそんな彼が、ある少女との出会いによって、心に温かみを持つようになるんですね。
まるで、いままで不通だった回線に突然電流が流れるように。
愛をまったく知らないで育ったはずの青年が、言葉ではなく本能的に愛を守ろうとする姿に、感動しました。
そうだ。愛も、本能なんだなあ・・・。

サム・リーも良かった。彼もまた壮絶な演技です。
下のポスターで、スゴイ顔してる人です。
何かに執着して人生を狂わせていくタイプのキャラクターというのは
映画的に観ていて非常に魅力的です。
こういう人の存在によって、主人公のピュアな心が引き立ってくるんですね。
ある意味、サムのほうも純粋なわけですが。


実は、この2人の役は最初、逆だったそうで、意外性を出すために逆転させたのだとか。
最後まで、この2人の大熱演に引き付けられてしまいました。

香港ノワール常連さんたちも出ていて、「あ!またこの人か~」なんて思ったり。
脇をかためる刑事たちも、良かったです。
正義感なんだか罪悪感なんだか、善と悪がごっちゃまぜになって、そんなことよりも、何が何でも生き抜こうとする主人公パンの存在に影響され、圧倒されているように思えました。
まるで狂気の中にまきこまれていくように、彼らの行動が過激化していくんですね。

あと、カメラワークとかライティングとかが何かホラーっぽいなあ?
と思いながら観ていて、監督はホラーがお得意な方のようです。

私の隣の席の男性は身を乗り出して見入っていました。
そして時折、場内に静かに響く
「フウーーーーッ・・・」という息をはく音。

とにかく、最高に熱い一本です。
香港映画の情熱と力強さは健在です♪