トランシルヴァニア

魂が熱くなる映画。

心というよりは、あえて魂と言いたいんですよ。

良かった~~~~。
こういう映画に出会うことができて、本当に心から嬉しい。

トランシルヴァニアといっても、ヴァンパイア映画ではないんです。
トニー・ガトルフ監督はアルジェリアの出身で、ロマ民族(ジプシー)の血を引いているそうで、これは自分探し(っていうとちょっとクサイですが)の映画なのです。

監督曰く
「愛する男を捜すために、世界の果てへと旅立つ女性の映画を撮りたかった。」

ガトルフ監督の作品は、「ガッジョ・ディーロ」や「愛より強い旅」を観ておりますが、
この2作品も今回の「トランシルヴァニア」も、テーマはほとんど同じなんです。
前の2作品は、ロマン・デュリス♪がすごく良かったし、どちらも好きな作品ですが、3つを比べた場合、一番良かったのはやはり「トランシルヴァニア」です。
考えてみたら、前2作は男性が主人公でしたが、今回は女性、というところも良かったのかもしれません。
しかも、ジンガリナ役のアーシア・アルジェントは最近は「マリー・アントワネット」でドゥ・バリー夫人を演じて有名で、綺麗な人ですがやたらに女性っぽくなくて、
キリッとしててしっかり芯の強い雰囲気や、それでいてセクシーでしかも知的な雰囲気が只者じゃない存在感を出しています。
彼女は「Bモンキー」の主人公もすごく似合っていて(というかジンガリナにかなり近いタイプ)良かったです。
ちなみにこの「Bモンキー」には、ルパート・エヴェレット(シュレックのチャーミング王子♪)やジョナサン・リース・マイヤース♪も出ていまして、この2人の演技とキャラクターも必見です♪♪

それにしても悪魔祓いっていうのは、アチラではわりとフツーなんでしょうか、儀式をやるところ、「愛より強い旅」と同じだなあと思いました。やり方は違うのですが。

とにかく私にとって、今回最も重要視していたのは、
チャンガロ役のビロル・ユーネル!
「愛より強く」ですっかり彼のファンになってしまったものの、日本ではあまり観ることができず、残念に思っていたところに、いきなり来ちゃったトランシルヴァニア!!

彼の仕草、声、セリフ、すべてがツボに来てしまい、もうどうしようかと思いましたね。
汚れまくったベンツを運転するビロル、
緊張してタバコを逆に吸うビロル、
車のボンネットで“お料理”するビロル(ここのシーン最高!!)、
見た目のワイルドな男っぽさがかっこよくって、
だけど結構繊細なところもあって、
ひたむきに生きてる孤独な男、チャンガロ役は、
本当にビロルそのものなのでは、と思えました。

アーシアのほうも、非常にはまり役でした。
彼女はローマ出身ですが、ロマの血をひいていて、
自身も「錨を持っていない」などと語っているあたり、やはりジンガリナそのものという雰囲気でした。

監督の撮り方が巧いせいもあると思うのですが、
俳優さんが”演技”をやってる、ということをすっかり忘れているくらい、登場人物が自然に入ってるんですね。
その他の脇役さんたちも、皆さん自然体。
かなり現地のひとたちも参加していると見えて、それがまるでドキュメントを観ているような気分にさせられるのだと思います。

音楽も素晴しくて。
ロマの音楽。それはとても情熱的で、魂を呼び覚ますような響きがあります。
アーシアが、お皿を割りながら踊るシーンは、実に決まっててカッコイイ。
タイトなスカートに履きこんだブーツなど、ファッションも素敵で、真似したいです。

上映前にずっと、ロマの音楽が流れているのですが、
どうも場に合わないというか、なじんでいないんですね。
それが、映画が始まり同じ曲が流れ出すと、一切の違和感がなくなって、映像と音楽がぴったり、溶け合っているんです。
それで、バーンと、トランシルヴァニアに連れて行かれた私なのでした。
名前が不明の不思議な弦楽器もワイルドで良かった。
大きさも形もチェロのようで、4弦、しかし塗装していなくて、ザクザクと木を削っただけみたいな弦楽器。
ヴァイオリンとかヴィオラは普通のだったのですが、弾き方はかなり激しい感じで独特した。
アイルランドとかアメリカ西部などの弾き方にも似ているなと思いました。

そうそう、コーヒーカップの占いって本当にあるんですね~。当たるのかなあ・・・
ハリー・ポッターを思い出してしまいました。

小道具の印象的な使い方にも魅了されます。
屋外の木につるしたシャンデリア!なんて素敵なセンスなのでしょう。
雪の上に放置してある、クラシックなベビーカーも可愛いし、
クマの人形なんか、アンティークな脱力的雰囲気がたまらなく愛らしくて。
そのクマを手に持ったビロルがいい!
ワイルドなオヤジと可愛いクマという取り合わせが、なんともいえずいい味出してました。
なんかもう~ガトリフ監督大好き!と思ってしまいました。

ラストシーンにはほーっと、心が癒されるのでした・・・

ありがとう~(´∀`)って感じよ。

大変素晴しい・・・というか、本気な作品でした。
つい最近で熱くなったのは、この「トランシルヴァニア」と「ドッグ・バイト・ドッグ」でした。

今回の渋谷の劇場はなじみの場所で、いつも結構渋くていい作品を上映してくれるところです。
やっぱり、大きい劇場ではこういう上質の作品は観ることができないのだなあ・・・
そういうわけなので、ミニシアターは、こまめにチェックしなくちゃ。