『ハンニバル・ライジング』の感想

2023年7月15日


このポスターは『ハンニバル』と同じイメージでデザインしたんですね。
色合いなんか、ほとんど同じですし。
だけど『ハンニバル』のほうが怖い顔でしたね~(^^;)
アンソニーのせいかな・・・

実はこのシリーズ、『羊たちの沈黙』しか観ていなかったのですが、今回の『ハンニバル・ライジング』観賞のために、あわてて旧3作をまとめて観ました。
それで、とくに『ハンニバル』が怖い怖いと聞いていたにもかかわらず、美しい映像と、レクター博士の独特の世界にすっかりはまってしまいました。

さて・・・、
今回のライジングの感想はどう書いていいやら、ちょっと困ってしまうのですが(笑)、
好きか嫌いか、と聞かれれば、私は好き、しかもかなりね、の作品です。
ダークな美意識がたまりませんね~。
特に主役が美形のギャスパー・ウリエルで、すごく楽しみにしていました。
彼は期待以上に、その美しさと残酷なイメージがしっくりとはまって、ぴったりの役でした。

個人的にはなかなか期待どおりにできていて、日本の雰囲気が変だとか、レクターは全然別人のようだとか、今までの作品とは雰囲気が違うとか、そういうことはどうでもいいことのような気がして、これはこれで独特の世界にできあがっているではないかと思いました。
まあ、グロテスクなシーンもありますので、人によっては入っていけないのかもしれませんけどね。
肉の部位の名称が動物のそれと同じ呼び方をしているのが皮肉でしたね。

こういうダークな雰囲気って、最近流行のゴシック・パンクにも通じるものがありました。
映画って、今という時代のイメージとか流行が、設定とは別の次元で、意識してもしなくても、入り込んでいるので、その感じを読み取るのは楽しみなことです。
1作目の『羊たちの沈黙』とはやはり時代の変化を感じましたね~

ピーター・ウェーバー監督の、格調のある情緒の出し方とか美意識が素敵。
基本的に、映像よりの表現スタイルをとる監督が好みですね。
やはり『真珠の耳飾の少女』の監督だけあって、映像のほうはかなり期待していたのですが、本当に期待どおりに美しく、メリハリのある出来栄えで、ビジュアル的満足度が高かったですね~
撮影はベン・デイビスで、なんと「レイヤー・ケーキ」を撮った人だったんですね。
雰囲気は大分違いますが、洒落ててセンスのいいタッチの撮り方だなと思いました。
映像がいい感覚だと、もっと観ていたい、という気持ちになるんですよね。


衣装は「シンドラーのリスト」や「戦場のピアニスト」のアンナ・シェパード。
この人のセンスも素晴しいですね~~。好きです。
とくに私は、「戦場のピアニスト」の、エイドリアンがボロボロになったときの衣装の汚れ加減とかに惹かれましたね~。
汚れも色々ですが、この時の汚し加減とか、布のほころび具合っていうのが絶妙でした。
今回も、ハンニバル・レクターが着こなす、グレーのツイードのコートがたまらなく素敵でした。
エイドリアンも似た感じのコートを着ていましたが、あのあたりの時代のメンズコートの定番なのでしょうね、きっと。
メンズファッションて本当に魅力的です
羨ましい~
今回は、ギャスパーの演技のほうに目がいくように、衣装は目立たなくしたとのことでしたが、いやいやどうして、その地味さの中にもちゃんとエレガントな要素を含んでいるところは見逃せませんねー。
確かに、あの美しい顔立ちにシックに抑えた感じの服は、いっそう彼の魅力を引き出していました。
さすがビックリマーク

そしてコン・リーさんの着こなすエレガントな服の数々も、目が離せませんでした。
レトロなスーツなどのデザインは、コン・リーさんのクラシックな顔立ちにとてもよく似合っていて、ためいきものでしたね。


美しきレクター・・・この、グラスを持つ手の指の繊細で綺麗なこと。
アンソニーのことはすっかり忘れて観ていました。
レディ・ムラサキとの出会いが、彼女がそれを意図したわけではないのに、ハンニバルをさらにダークな世界へと引きずり込んでしまったということなのでしょうか。

監督が「彼はちょっと壊れたところがあって、そこがいいんだ」と語っておりましたが、思わず納得してしまいました。
レクターのキャラクターにぴったりの人だったのですね。


これ、ちょっと怖いですが、友人曰く「血の似合う子」と、そのとおりなんですよね~(汗)

この表情は「パフューム」のベン・ウィショーに負けてないですね~。
どちらも捨てがたい素晴しくダークな雰囲気。


コン・リーさんは「マイアミ・バイス」のときより似合っていたかも。
暗い過去のあるけれども、芯の強さを持った女性。
解読できないような、神秘的で不思議な世界を演出するのに、日本的要素というのは必須項目なのかしら。
でも、この方が日本人とは見えないのですが(^^;)
ま、そんなことも深く気にしないほうがいいのでしょう。
それにしても日本人でこういう役ができる人がいないんでしょうね。
ところで、悪役(というかレクターも悪役?ということはどちらも悪役どうしってことで・・・笑)のリス・エヴァンスが最高でした。
この方もちょっと壊れてるところが魅力的。
警視さんとか、その他の悪役さんたちのキャスティングもよかったですね~~


こちらは、アンソニー・ホプキンスのレクター博士。
どこかチャーミングで、気品のある貴族的な雰囲気と残酷な面と。
ギャスパー・ウリエルとは顔のタイプが違いますが、雰囲気は結構似ていたかもしれません。

今回判明したことは、なんと「ハンニバル」で最後に出てくる旅客機は、日本行きだったそうなんですね~。
そういえば東洋系の乗客だった・・・。
あのあとどうなるんでしょうかねー。
まだ続きがあるのでしょうか!?もしも続きがあるなら観たいです。

さて、実を言うと、「ハンニバル・ライジング」で最も私が気にしていたことは、バッハの「ゴールドベルク変奏曲」でした。
「ハンニバル」でも使われていたのは、グールド演奏のもので、1981年録音の、ゆっくりテンポのもの。
そして、「ハンニバル・ライジング」では、テンポが速かったので、おそらくグールドのデビュー盤である1955年録音のゴールドベルクだと思われます。
これって、すごくおもしろいと思ったし、そこまでこだわってるのね~と、感心しました。
グールドの美しいピアノの音が、なんとも言えない空気感を漂わせていて、私はついついうっとりとその音色に聴き入ってしまうのです。

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