ほぼサム・ロックウェルの一人芝居『月に囚われた男』

2023年6月7日

この作品を観に行った大きな理由のひとつは、主演のサム・ロックウェルが大好きだからなのですが、内容もすごく魅かれるものがありました。

監督は、デヴィッド・ボウイの息子であるダンカン・ジョーンズ。
でも、ボウイという超有名人の息子なんてこと、観終わるまでまるで気にしていませんでしたし、観終わってからはジョーンズ監督の素晴らしい才能に感動するばかりでした。

個人的には、愛してやまない藤子・F・不二雄先生のSF短編集を思わせる、懐かしさとヒューマンな温かさとが心地よかったです。

月でたったひとり、3年間、ルナ産業という企業のミッションのため、派遣されている男のおはなしです。
地球には愛する妻と子供が待っている……もうすぐ会える……そんな希望があるから、孤独に耐えることができる……。
けれども、ある事故がきっかけで、急展開……これ以上書けませんが!笑。

SF作品なのに低予算ということですが、そういうことはちっとも気にならなくてむしろインディーズ作品として大変上質な出来栄え、本格的なSF作品として完成していることに感動でした。
最近はめいっぱいお金かけたCG映像など沢山見せられているので(それはそれで好きですが)、こういう動きの少ない、じっくり見せてくれるSF作品は新鮮でもありました。
低予算といえども、きちんとリアリティは保っていて、表現力の確かさにも感激でした。
そこが、物語に引き込まれていく理由でもありますね。
逆に、大作SFもので、それはありえないでしょ?(ツボをはずすととんでもないことになる)みたいな観ていて白けてしまうようなものもあるので、つくづくお金じゃなくて感性の問題なんだなーと思うのでした。

ほとんど独り芝居という感じだったサム・ロックウェル、本当に素晴らしかったです!!
地球から送られてくる妻と子の映像を観てる時の表情とか……ネタばれになるので書けないけど、終盤の演技は心に沁みました……。
大げさな演出やアクションがあるわけでもなく、ほとんどが主演俳優の演技にゆだねられたかのような脚本。
俳優としても、かなりの難役だと思うし、それをじっくりと少しも飽きずに、逆にぐいぐいと彼の表情に引き込まれていくのでした。

ガーティという名前のコンピュータの声がケヴィン・スペイシーだったのですが、これがすっごく良いお声!
「2001年宇宙の旅」のHAL9000を思わせる、静かでクールな響きが素敵でした。
“彼”は人間へのあこがれみたいなものがあるように思えました。
コーヒーカップを”持って”いたりとか。
終盤に近付くにしたがって、徐々に機械的な雰囲気から人間的な感覚へと進化しているような表現が面白かったです。
画面の黄色い顔の表情が変わるのも面白いアイディアだと思いました。

こちらはダンカン・ジョーンズ監督。
ボウイさんとは似てるのかどうか?これだとよくわかりかねますが、なかなかのイケメンさんかと思います……それと、やはりオタク系だなーという印象ですね♪
両親の離婚後は父ボウイに育てられたそうで、父の影響でクリエイターとしての才能を伸ばしていったのですね。

本当に、心から、ジョーンズ監督の次回作が楽しみでなりません。
なんとジェイク・ギレンホール主演だそうです!!

SF

Posted by miniaten