孤独な少年の成長を見守る『少年と自転車』
日本の育児放棄の実話に基づいた作品だそうです。
カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞。
親に見捨てられ居場所がなかった少年が偶然出会った美容師の女性に里親になってもらうことで、自分自身を取り戻していく。
人が人と関わることで、変化を起こし成長して前へ進む。
語り口は静かで、けれども、しっかりと問題提起をする、独特の語り口でした。
ジェレミー・レニエ、出番は少ないですが、父親役で出演していました。
フランスでは、女性が一人でお店を経営しているのが多いのでしょうか。
実父の働くレストランのオーナーも女性だったし。
13歳の新人、トマ・ドレはオーディションで選ばれた新人。
本人は医者を目指す勤勉なメガネっ子だそうです。
喉の左側にアザがあるのですが、バイオリンアザだったりして?と思ったけれど、不明です。
それより彼は空手が得意なのだそうです。
大人になったらアクションもやるのでしょうか。
シリルは赤いジャケットや赤いTシャツを着用しているのが『理由なき反抗』のJ・ディーンに思えて、オマージュなのかなあ?と思ったりしました。
しかし息子が父に拒絶されるのは『エデンの東』でしたっけ。
なんとなくディーンの映画を思い出していました。
ベートーベンのピアノ協奏曲第五番「皇帝」が使われておりますが、ごく部分的に、しかもほんのときたま入る程度。
合っているのか合っていないのか、いまひとつしっくりしないような感じもありますが、物語の節目に流れるので、その時起こったこととそれによる主人公シリルの心の変化を印象づけるように思いました。
静かだけれども力強さを感じさせる曲ですね。
誰かなあと想いましたら演奏はブレンディル(P)、オケはロンドン・フィルでした。
しかし監督は今まで、音楽をあまり使わなかったそうです。
『ヒアアフター』のセシル・ドゥ・フランスは、ヒアアフターの時もそうでしたがとても癒し系な雰囲気の人で、不思議な存在感があります。
彼女の演じるサマンサは、シリルの痛みや行き場のない想いを受け止め、一緒に生きていこうとする、とても芯の強い温かい人。
この人柄が、セシルの雰囲気にとてもよく合っていて、「演技しないようにする」ことを心がけたそうですが、本当に自然な感じで素敵でした。
何か理由があるとかそういうことではなく、なりゆきに見えるのだけど、何か、それをしなければならないという感覚に突き動かされているんですね。
淡々としていながらも、次にどうなるのかな、と決して退屈させない良くできた脚本でした。
そして、まだここで終わりじゃないよね、というところで終わるのがフランス映画っぽくて。
けれども希望を残してくれるのでした。
ピクニックいいなあ。
サンドイッチ食べたい。
ラストシーンの背中を観ながら、頑張ってね、と心から祈ってしまった。
今月はダルデンヌ兄弟監督作品を何作か観る予定です。