リバティーン

2018年3月8日

ジョニー・デップという俳優は、決して作品的に恵まれているようには思えない。
(というか、ジョニー自身がわざとそういう道を選んでいるのだけど)
なのに、人気ランキングで常にトップを独占している。
そういう私も、かなり好きな俳優ではあるが、それにしても、なぜこんなに人気があるのだろうか。
そのルックスの良さのせいなのだろうか?
もしも、ルックスが理由で彼のファンだというなら、それは、そうとうジョニーを甘く見ていると思う。
ただならぬ魔力とオーラに溢れる、危険な魅力の人物だと思うけど、一般向きな俳優ではないと思うのね。
彼は確かに演技力があると思う、でも、それはただ単に演技がうまいとかいうのとはかなり違う。
そう、演技がうまいだの、別人になってるだの、なりきってるだのという、言ってみればそういう表現は「技」であり、「職人芸」の範疇だと思う。
まさに、カリスマ演技。
単なる演技を超越して、演じる役を完璧に「ジョニーの世界の人物」にしてしまう。
つまり、ジョニーにしか出せない、味付け、演じるということが単に演技にとどまらず、言ってみれば芸術的な感性。
それは、あとから学んで身につけられる類のものではない、持って生まれたものなのでしょう。
だから、言葉での説明が不可能であり、
「レジェンド・オブ・メキシコ」を観たときに思った。
彼が登場すると、作品がジョニー色に染まってしまうのです。
見終わって何よりも脳にイメージ画像として鮮明に残るのはジョニー、その人であるわけです。

今回の作品、「リバティーン」。
これは、作品的には私の好みのタイプに属するけれども
(暗くて、汚くて、ドロドロしてて、はっきりしなくて、でも美しい)
セリフが多すぎると思ったし、展開も一般向きではない。
演出にもさほど新鮮味は感じられなかった。
300ほどある座席は、満席で、女性ばかりだった。
冒頭から「あれれ、これだったら何もジョニーじゃなくてもいいのでは?」などと、思った私は浅はかモノです。
後半の壮絶なジョニーの演技には、またもややられてしまった~~~。
冒頭の「決して私を好きにならないだろう」と言った彼は、挑戦的に見えた。
そして、やりとげてくれました。お見事です。ほんとうに壮絶。
感性を、挑発的に刺激する人物、それがジョニー・デップなのです!

マルコビッチもかなり好きな俳優のひとり。
今回も、良かったですね。彼の場合、立ってるだけでいいですね。
素晴しい存在感。それと、大人の色気がありますね。でも今回はちょっと物足りなかった感じ。
もっとガンガンやってくれ!

そして、なんと、拾いもの!
「プライドと偏見」で、ウィッカム氏を演じた、ルパート・フレンド。
顔立ちがオーランド・ブルームに似てるので、一瞬、あらら、ジョニーとのツーショットはまるで「パイレーツ・オブ・カリビアン」みたいですよ~~。と思った。
「プライドと偏見」の時は、へタレ将校役だったせいか、イマイチぱっとしなかったのに。
(あれは演技だったのね?!笑)
今回はすごくいい!
特に最後のほうね、ネタバレになってしまうので、書かないけど、夜のシーンは最高でしたね。
気に入った。
ジョニーの「愛人」役(?)という、おいしい役どころ(笑)。
メイクもコスチュームも、綺麗な顔立ちによくお似合いでした。
いやいや、ちょっといいかも。今後は要注目。

美術、音楽、衣装がグリーナウェイの「コックと泥棒、その愛人」のスタッフ。
退廃的な雰囲気は、ばっちり堪能できました。
全体に照明が暗いのは、ろうそくの灯りしかなかった当時の生活をリアルに表現するためと思われた。
この感じはスタンリー・キューブリックの「バリー・リンドン」を思い出させた。

また、「プライドと偏見」のキャストの面々
(ロザムンド・パイク、トム・ホランダー、ケリー・ライリー、ルパート・フレンド<こんなに出てるの!)
と、なかなか楽しませてくれました。
実は、先日は「DOOM」を観ていて、それにもロザムンド・パイクが出ていましたが、なかなか知的で綺麗な人だなあ~と思いました。
あと私がいいなあと思ったのはケリー・ライリー。
なかなか素敵な女優さんですね。
プラ偏のときは貴族でしたが、今回は娼婦役とガラリと雰囲気が変わっていて、楽しませてくれました。
トム・ホランダーも、全然イメージ違うので、初め「誰だっけ??」とわからなかったくらい。

「奥さんがかわいそう~」なんていう感想は実に陳腐極まりない・・・
(帰るとき、背後の女性が発言してた・・・溜息)

壮絶なジョニーの演技に酔いしれる作品でした。

リバティーン [DVD]
ジョニー・デップ (出演),‎ サマンサ・モートン (出演),‎ ローレンス・ダンモア (監督)