音楽と友情をテーマにした『路上のソリスト』
公開前から楽しみにしていて、公開してわりとすぐに観ました。
その時は満席!ネットで席を確保しておいたから良かったのですが、そうでなかったら買えなかったんですね。
マイケル・ジャクソンが亡くなったこともあり、なんとなくこの作品にリンクしてしまいました。
先日、ボリショイ・オペラを観に行った際、オケのホルン奏者が黒人で、とてもカッコイイなーと思っていたのですが、クラシックの演奏家で黒人は珍しいんですね。
まだまだクラシック界は白人たちの世界で、そういうこともあって、強く印象に残りました。
ジョー・ライト監督で、音楽担当がダリオ・マリアネッリで、ロバート・ダウニーJr.が出るとなれば、これはもう、期待しないわけがありません。
しかもテーマが音楽と友情。
期待をまったく裏切らない、大変素晴らしい作品でした!
原作者のスティーヴ・ロペス氏は「テーマはホームレス問題ではなく、友情と音楽の持つパワー」だと語っています。
音楽がいかにして人の心に響くのか、そしてそのことが人を突き動かすのだと、彼自身が受けたインスピレーションを、伝えたかったのだと思います。
友情って、なんだろう、とこの映画を観ながら考えていました……
たくさん会話することでも、一緒に食事することでも、長年のつきあいでもない。
ただ、彼らは魂でつながってるんだなあ……と。
そんな風に思えて、それが特に終盤にいくにつれて、じわじわと心にしみてきて、胸が熱くなりました。
そして、必要なときそばにいる人、それが友達。
ジョー・ライト監督は、深い心の内面を描くことについて、とても上手な人だと思う。
あまり多くを語りすぎず、意外にもさらっと表現しながらも、語るべきことをきっちり語るのが凄いです。
このシーン、とても好きでした。
オーケストラのリハーサルを見学するシーン、大感激でした!
ドキドキしてしまった!
なんたってベートーヴェンのNO.3交響曲。
もう、すっごい興奮してしまいました。
ところでトム・ホランダーが出るというのですごく楽しみにしていたのですが……、なかなか登場しなくって、出たと思ったらほんのちょっとだけで、残念。
でも、さすがに強烈な存在感でしたね。
いかにもチェロの首席奏者、という雰囲気がそれはそれは完璧で、娘と2人で「本当にああいう感じの人いるよね」って、驚いていたくらい。
バッハの楽譜持ってくるシーンで思わず笑ってしまいました。
うんうん、やっぱりね、バッハだよね、みたいな(笑)。
「おれがやりたいのは音楽を奏でることだけなんだ」
2弦しかないボロボロのヴァイオリンで同じフレーズを弾き続ける……
ジェイミーはなかなかにハマり役でした。
ナサニエルにとって、音楽はすでに好き嫌いのレベルではなく、ただ、音楽とともに生きること、それしかない。
それ以外なんて、ない。
そういうもんだよなあ、って思う。
好きとか、嫌いとか、見つけるとか見つけられないとか言ってるのはまだ頭で考えちゃってる段階で、ナサニエルの世界にはとっくにそんなのは存在しない。
ただただ、楽器を弾いて、そして、ベートーヴェンの魂と触れ合う。
ロバートは本当に何を演じててもその役にきちんとなりきっていて、しかも恐ろしく自然なのです。全然無理がないというのか、きっとこういうのが天才的才能なんだろうと思わせる。
凄い人です。
いかにも書くことを仕事にしてる人、って感じの佇まいが素敵でした。
あと、あんなところにベートーヴェン像があるって知らなかったし、しかも落書きだらけで!!って驚きだった……。
でも、ベートーヴェンの音楽は永遠なんだなあって思うと、ほんとうに感動です。
ずっとずっと、彼の音楽が奏でる人を癒し、聴く人を癒し続けるのです。
そして、ロペスとナサニエルの友情も、永遠なんですね、きっと。
サントラは、発売前から予約していて、公開前からすでに聴きまくっていました。
ダリオ・マリアネッリなら絶対に買いだと思いましたので、迷わず予約。
すごくいいサントラです!ベートーヴェン好きにはたまらないですね。
原作はロペス氏の視点で、日記風な感じが良いです。