パンズ・ラビリンス

2018年5月10日

制作:2006年メキシコ、スペイン、アメリカ 119分
原題:Pan’s Labyrinth

監督:ギレルモ・デル・トロ
脚本:ギレルモ・デル・トロ
音楽:ハビエル・ナバレテ
撮影:ギレルモ・ナヴァロ
編集:ベルナト・ビラプラナ

オフェリア:イバナ・バケロ(宇山玲加)
パン:ダグ・ジョーンズ(山口りゅう)
ヴィダル:セルジ・ロペス(諸角憲一)
カルメン:アリアドナ・ヒル(瀬尾恵子)
メルセデス:マリベル・ベルドゥ(塩田朋子)
Dr.フェレイロ:アレックス・アングロ(伊藤和晃)




子供時代というのは、なにかというと現実逃避しがちなもので。
それは、自分の人生を自分でコントロールできるようになっていないためで、最も手っ取り早い方法としては妄想の世界に入るのが一番かもしれませんね。
私は、この少女は統合失調症かと思ってしまいました・・・。
「ビューティフルマインド」でラッセル・クロウが演じて有名ですが、素晴しかったですね。
いい作品でした。


まあ、そんなことよりもなによりもとにかくこの「パンズ・ラビリンス」は大変気に入りました。
ファンタジーといっても決して、よくありがちな、きれいごとを並べ立ててご都合よく勧善懲悪をバッチリ決めてくれちゃうお子様向きのものとは全然全く別の世界。
・・・そういういわゆるきれいごとの現実逃避型ファンタジーは、以前は胡散臭くてイヤだったのですが今はそんなものも余裕で観れるようになってきました(笑)。
いつでも現実に立ち向かうのが好きな私としては、現実逃避は決してしないですもんね。
ただし、イマジネーションの世界で遊ぶのは大好き。
このあたりがデル・トロ監督の性質にも合ってるかもしれません。
結構、お子様向けファンタジーについていけない大人は多いらしい。
でも、そんな大人たちにも、「パンズ・ラビリンス」はウケがいいようです。


本当に、何もかもが素晴しかった!素晴しいイマジネーションの世界です。
血なまぐさくて暗くて残酷で美しい悲劇。
しかし本来、芸術の世界や童話や神話に表現されてきた人間の本質ってそういうものなんじゃないだろうかと思ったりします。
そういう本質を避けようとすればするほど、うそ臭くなってしまうのかもしれません。

冒頭に見せられたシーンが、ずっと頭から離れないんですね。
いつそのシーンについての謎が解明される時がやってくるのかと、待ちながら観て・・・・そして結局、最後まで観ないとわからないのでした。
こういう見せかたっていいですね。楽しいです。

娘もすっごーーく気に入って、終わってから目を輝かせて大喜びしていました。
彼女は特にメルセデスがお気に入りの様子でした。
ダークな美しさの見せ方もいろいろですが、こういう非凡でオリジナルな世界、そして造形センスがかなりツボ。大感激でした。
ただ綺麗なだけのファンタジーより、私もこういう方がかえって入りやすいですね。
そして現実の厳しさもきちんと織り込まれていて、うまくできてる。良かったです。
衣装も良かったなー。
娘も、衣装がいい!って感激してました。
少女趣味の萌え加減と、レトロな雰囲気とかに監督のコダワリと美意識をひしひしと感じます。
とくに、寝巻きの生地の感じとか、ひかえめなフリルがすっごくいい。
それに深い緑色のメイドさん服は、「不思議の国のアリス」へのオマージュでしょうか。
泥んこになってしまうあたりもなんかいいですねー。
オフェリア役のイバナ・バケロ、すごくいい雰囲気を持っています。
物悲しげな顔立ちや表情に、ヒロインの悲劇的な運命を感じさせます。
年齢的にも、微妙で不安定な年頃のはかなげな美しさが作品にあまりにもぴったりで、彼女のために脚本を書き換えたというくらい監督が惚れこんだのもうなずけます。


私は巨大カエルとかパンが非常に気に入りました。
ペイルマン(目が手についてる人)はホラーっぽくって、笑えましたね。面白すぎ!
パンの俳優さん「ヘルボーイ」のエイブ、そしてシルバーサーファーなんですよねー!
エイブと顔がちょっと似てたので親しみがあったのかな・・・。


ちなみに、デル・トロ監督は「ヘルボーイ」の監督でもあるのですが、やはりダークな世界の描き方がとても良かったですね。
「ヘルボーイ2」も製作中とのことで、すごく楽しみ!
もうすっかりデル・トロ監督のファンです。


ところでこの作品で描かれている時代は、スペイン内戦時代。フランコ政権です。
おお、「サルバドールの朝」にリンクしましたね。
ヘミングウェイの「誰がために鐘は鳴る」やピカソの「ゲルニカ」、オーウェルの「カタロニア賛歌」など、多くの芸術家たちが題材とし、実際に戦線に加わったりしていますね。
そうした、スペインにとって非常に重く暗い時代が、このファンタジー映画の中の時代背景なわけです。
その現実的にダークな面を象徴するかのような存在が、オフェリアの義父、ビダル大尉です。
彼は、いわゆる完璧主義で、仕事をビシビシとこなし、とても冷酷で非情な人物。
でも、生まれてくる子供に異常なまでに執着しています。
(いちいち変態っていうか異常なんですが)
私はあの悪役がすごく気に入りました。
ブーツをピカピカに磨いてお手入れしたり、音楽好きだったり、懐中時計を自分で修理して大事にしている様子など、細かい人物描写がいいですね。
ヒゲを剃るシーンで、鏡に映った自分の首を切る真似をするのを見て、うーん、なかなか単純でないところがスゴイなあーと思いました。
細かい演出に人物の複雑さや奥深さみたいなものを感じました。
彼は「シェフと素顔とおいしい時間」でもチラッと登場しますが、なかなか人物の細やかな部分を巧く演じる人だなーと思いました。

DVDが出たら、監督のコダワリをとことん追究したいです!

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