美しい男たちの人生を覗く『シングルマン』

2023年6月12日

感動しました!

ものすごく美しい映像が、目の前に展開されていくのがたまらなく気持ちよくて、……。

ふと、スタンリー・キューブリックやセルジオ・レオーネの映画を観ている時のような素晴らしい気分でした。

共通のものをなにかあげるとするなら、完璧さ、完成度の高さ、美意識の高さ。

観ていると、静かでありながらもじわじわと人の深層に響いてくる感覚があって、かなり好きな作風の映画です。

ファッション業界で超一流の仕事をしてきたトム・フォードの初監督作品ということで、とても楽しみにしていました。

この作品のテーマは、生と死。
大切な、かけがえのないものを失ったひとりの男、ジョージが体験する一日。
その一日に人生の大切なものが凝縮されているようで、そして、ジョージの気づき……。
ふとした日常の、幸福感。

セリフで語るのではなく、微妙な表情や目や、それから・・・何かを常に語りかけてくるような映像、構図。

あまりにも見事で、息をのむほど美しくて。
美しさに泣けてしまったくらい。
どのシーンを切り取っても、一枚の絵になりうる美しさでした。

あまりにも完璧な映像美にクラクラしながら、さらにすごかったのは主人公ジョージを演じたコリン・ファース。
ジョージのかかえる喪失感、そして本当に微妙に変化していく心の状態を、見事に演じていました。

友人のチャーリー役、ジュリアン・ムーアも綺麗でした。
髪型やメイク、ドレスなど、’60年代モードな雰囲気がカッコ良かったです。
スーツとドレスでツイストを踊るシーン!オシャレな大人って感じです。

美しい男達を、ひたすら美しく撮っていく映像、ただただ見とれていました。

光の感じも、場面ごとに考えられていて、きめ細かいなあ~と思いました。
映像感覚に優れている監督は、必ず光の使い方を心得ているんですよね。

こちらは、マシュー・グード。
ジョージのパートナーだった建築家のジム役です。
彼は冒頭から美しい死体として登場します。

ジョージとの出会いのシーンでは軍服を着用していましたが、服のラインが良いのか彼のスタイルが良いのか両方なのか、とにかく綺麗で、見とれてしまいました。

ニコラス・ホルト。撮影当時は18歳だったそうです。
ふわふわの白いセーターはすごく可愛いイメージ。
ジョージのことを思って心配している、というのも可愛い。

このシーンもすごく印象的でした。
ジンを買いに行ったところで出会った美しい男カルロス。
ジェームス・ディーン風♪
ジョージとは全然違うタイプで、ジョージは、ほんの少し心を動かされるけど……。

カルロスのセリフ「恋はバスみたいなもの。バス停で待っていると次がやってくる」
正確ではないと思いますがこんな感じのことを言っていて、なるほどな~と思いました(笑)。
この後のシーンの赤い照明効果はまるでデヴィット・リンチ風だなあと思いました。
ジョージの車がヴィンテージのベンツで、これがまたオシャレで絵になるんですね~。

カルロス役のジョン・コルタジャレナは、街やファッション雑誌でよくお見かけしていたことに気付きました。
以前、渋谷でも大きなH&Mの看板にいらっしゃいましたね~
あの時は名前も知らなかったけど、かなり目をひく存在だと思いました。
たくさんのブランドと契約しているトップモデルで、今回映画は初出演。
とにかく素晴らしくスタイルの良い人で、さすがに身のこなしも美しい!

この作品、他にも語りたいことがありすぎなのですが……
衣装担当は『3時10分、決断のとき』でも素敵な衣装でワクワクさせてくれた、アリアンヌ・フィリップス。
今回は現代的な服だけどなんたって時代設定が魅惑の’60年代です。
どれもオシャレで素敵でした。
コリン・ファースとニコラス・ホルトの衣装だけはトム・フォードがデザインしてミラノで作らせたそうですが、生地のなめらかさや美し~いシルエットにはうっとりしました。
ジョージのかけてる黒縁の眼鏡も気になりました。

また、ジョージの住んでいる家が気になって、調べたらフランク・ロイド・ライトの弟子であるジョン・ロートナーの設計で1949年にLAに建てられたそうです。
アメリカっぽい色とイメージのレッドウッドとガラスを大胆に使っていて、とてもモダンで落ち着いた感じのデザインは、ジョージの雰囲気にぴったりでした。

美しい男性4人、勢揃い。

皆さんスーツの着こなし、素敵ですね~!

監督は次回作も予定しているそうです。
どんな作品になるのかすごく楽しみです!

『シングルマン』、トム・フォード自身の内面をうつしだすかのような、物語とそして美意識とに感動しまくりでした。

一生ものになりそうな作品でした!!
また観たいなあ……
観れば観るほど好きになりそうです。
次に観るときは、細部をじっくりと観察したいですね。

GQの表紙にトム・フォードが!
思わず購入してしまいましたよ♪
監督のインタビューや特集記事がありました。

西野椰季子の映画とオペラとバレエとクラシック音楽-シングルマン

丁度、このGQにもトム・フォードの広告がのっていました。
モデルはニコラス・ホルトです!
最初、誰だかわからなかった~

深いブルーのジャケット、チェックのシャツ、サングラスがいかにもトム・フォードらしい。
そしてカラスがバサバサしてるのは、ヒッチコックのオマージュでしょうか?