ブラック・スネーク・モーン

クリスティーナ、サミュエルの奴隷になる?!って感じで・・・
なにやら変態ちっく!?なチラシのデザインに、おっかなびっくり、若干弱気になりながらも、
勇気出して行ってよかったです。
とっても素晴しい作品でした!
やっぱり単館上映はいいのをやってくれるな~と感激。
しかしできればこういうのを、最新設備で観たいわけですが。
前の人の頭が邪魔になりながら観なくちゃいけないの・・・。
お客さんが立つとスクリーンに人影がうつるしね・・・
(頼むよ~まだ終わってないのに立たないで~^^;)

クレイグ・ブリュワー監督は、非常に音楽の使い方が印象的で、前作「ハッスル&フロウ」でもメンフィスが舞台で音楽はラップでしたが
今回はブラック系でもぐっと南部ぽい音楽、カントリー・ブルースなのです。
ここでふとエルヴィス・プレスリーや、「ウォーク・ザ・ライン」なんかを思い出しますね。

また、描かれていることは、心のとても深い部分、それは精神世界ともいえるくらい深いのではないかと思えるのです。
ブリュワー監督って、ほんっとーに、センスの良い人だなーとつくづく思わされました。
「ハッスル&フロウ」のときにも、その演出の上手さ、渋さとそしてクールなかっこよさにはうなったけれども、今回もううむ、やはりスゴ腕ですね~監督。
個性的な俳優さんの内面の強さ、真のあたたかさを引き出して表現させるのが、すごくうまいんです。
だから、俳優さんがホットで最高にかっこよく見える。体温を感じるんです。


で、結局、男の優しさの映画だな、と思いました。
「ハッスル&フロウ」でも、主人公の男っぽい魅力にやられましたね~。
クールでエッジのきいた感性は、大いに私好みです。
骨太で、ビシッと気合いを感じますね~いいですね~。
そんじょそこらのハートウォーミングドラマなんか、てんで軟弱で歯ごたえなしに思えてきますね。

ブラック・スネークというのは、心の闇をあらわすのだそうです。
戦前のブルースマン、ブラインド・レモン・ジェファーソンの曲からとったそうで、サミュエルがそれを演奏し、歌うシーンがあります。
かなり訓練したとのことですが、とても自然でサマになってて渋いなあと思いました。


レイ役のクリスティーナ・リッチの強烈な目の輝き、とても小柄なのにその圧倒的な存在感が凄いと思いました。
以前はもっとムチムチした女の子という印象でしたが、今回の彼女はとてもスッキリした体型で、
ドラッグ中毒で不健康に見えるように、役作りしたそうで、スゴイなーと思いました。
彼女はずいぶん前から女優やってる気がしてましたが、なんと17年のキャリア。
なのにまだ27歳なんですねえ。


子供の頃に虐待を受けたりして自分は無価値だと思わされると、自分を大切にすることができなくなってしまい、
自分で自分を傷つけることがやめられなくなってしまうのだそうです。

「自分を大切にしろ」

というラザラス(サミュエル・L・ジャクソン)のセリフ。
この、あたりまえの言葉が、すごく深いと思いました。
あたりまえの言葉なのに、今まで誰も彼女には言わなかったのだろうなと思わせるシーンでした。

そんな傷を持ったヒロインや、
ジャスティン・ティンバーレイクも、俳優経験が浅いにもかかわらず、内面の弱さと強さをよく表現していて、その演技が印象に残りました。
人は、弱い部分をもっているけれども、それを超える強さも持ち合わせているのだ、とそういうことがとてもよく伝わってくるのでした。

「ママの遺したラヴソング」に似た感じもありました。
でも、あれよりずーっとずっと、パンチが効いてて、渋い雰囲気がいい感じでした。
私の中ではあのトラボルタの役が、サミュエルの役とちょっとかぶりました。
しかし今回はレイとラザラスに血のつながりも何にもない、赤の他人、知り合いですらない、というところがポイントで、
”道に捨ててあった”汚れた女を拾ってきて癒そうとする男の姿には、大きな深い人間愛、父性愛を感じました。

食事シーンも良かったですね。

「今夜はステーキだ」
って、いうセリフが気になりました。
(ステーキ、はちょっとこの際脇においときまして・・笑)
「今夜は○○だ」
って、なんかものすご~~~~くあたりまえのセリフだけど、
まてよ・・・と思う私。
このセリフって、食事を大切に考えてないと、さらっとフツウには言わないと思うんですよね。
ここには、手作りの気持ちをこめた食事だからね、楽しみにしとけよ、だからその時間がくるまではワクワクして過ごすんだよ、
そういうものすっごくあったかい心が感じられるのです。

人間再生の、とっても心温まる物語なのでした。

ココロの傷を癒すのは、ブルースと、畑の野菜と、
愛、なのでした。
そして、鎖!
鎖はとても象徴的な存在で、映画の中では重くて黒い、ずっしりとした鉄の鎖が使われているのですが、
決してちぎれたりしない安心感をもたらすのです。
ああ・・・そうか。
もしかすると、目に見えない鎖で、我々はつながれているのかもしれません。
それは、拘束する意味ではなくて、
絆。
その見えないけれども確かな存在があるからこそ、強くなれるのかもしれません。

この愛、は、恋とか恋愛とかではなくて、もっともっと深くて広くて大きな大きな、人間の本質的な部分に根ざすもの。
サミュエル・L・ジャクソンの、父性愛を表現してくれたその温かみのある演技に感動でした。

衣装とか小道具などにも心ひかれるものがたくさんありました。
特に監督は白が好きだとみえて、「ハッスル&フロウ」で主役のテレンス・ハワードに着せた白いランニングシャツがかっこよくって印象的でした。
今回もサミュエルがやはり白いランニングシャツを着ていて、クリスティーナの白パン(笑)もすごく強烈でした。
なんかあの白いコットンの質感と色が鮮明に、残像のように、脳裏に焼きついたのでした。

他にも印象的だったのがソファにかけてあって、レイの痛めつけられた身体をふんわり優しく包んだ、赤い手編みのブランケット。

それに、アンティークな模様の入ったヒーター。
ガッチリとしていて、太いチェーンの過酷な扱いにも耐える強靭さを持ち、どっしりとして決して壊れない、動じない安心感を感じさせてくれました。


ゴミ出しに行ったら、女の子が落ちてました~・・・