ブロークン・フラワーズ

オジサン(しかもフツーの)と、ピンクの花。このとりあわせがなんともいい感じです。

ジャームッシュは「ストレンジャー・ザン・パラダイス」の時から好きです。
なんていうか・・・。
この、脱力かげんがたまらなくいいんですよね。
ストーリーの内容について、あーだこーだと考えて観ないのが正解。
例えば、道とか歩いてて、なんのへんてつもない、石かなんかの塀があったとする。そこに、なんだかわからないんだけど、妙に心惹かれる。なんか、そういう感じね。
この感覚が、ジャームッシュかなあ。
淡々と、力抜いて、ある意味、瞑想状態のような。
そして、不完全で、あいまいな感覚。だけどそれは、軟弱とかいいかげんとは違う。

それと、今回はちょうどお世話になってる方から勧められて、久しぶりにシンクロニシティ関連の本を読んでいたところだったので、妙なところでウワア~~ヤバイなこれ。って思った。
実は私はここのところ、精神世界系のことを意図的に避けていたので。
でも、そういう視点で観るのもなかなかおもしろかった。

映像はいつものことながら、じっつに構図がうまい。
飛行機が飛び立つシーンなんか、端っこにちょびっと外灯が入ってたり。
空間の取り方が、独特だけど、ものすごい絶妙な感覚。
あと、時間の感覚。間のとりかた。

音楽と映像の、ギリギリのバランス感覚。あってんだか、あってないんだか~~ていう。
ファッションもね、ギリギリな感じ、なぜかこれがすごいオシャレね~。
ここらへんは、ソフィア・コッポラとかもかなり近い感覚がありますね。

ビル・マーレイは、S・コッポラの「ロスト・イン・トランスレーション」の時の演技にちょっと近いものが感じられたけど、
今回はほとんど表情が変わらないし、セリフもすごい少なくって、そういう中でび・みょう~~~な感情の変化を出してるあたりに、彼の役者センスの素晴しさを感じました。
個人的には「コーヒー&シガレッツ」のときのビルが最高だったんですが。
もーおっかしくって。肩の力が入ってないところがすごくいい。
で、ジャームッシュとの相性がバッチリなんだなー!と思った。

人はどうも、結論がないと不安や不満に陥る傾向があるようだけど、映画っていうのは常に、脳の刺激アイテムなわけで、別に結論めいたことはあえて必要なかったりしますね。
う~ん、でも、この作品て実は、続編があったりして?!<ナイナイ。
気になるよね~~って終わるところが、粋なんですね。これが。

ピンクがキーワードとなっており、いろんなピンクが出てくるのが面白い。
いろいろなピンク色、素材感、そういうの観るのって楽しい。

おせっかいの隣人も、最高におかしい。探偵ぶってるけど、全然推理になってないし。
あと、ヴェジタリアンの夫婦が出てきて、一緒に夕食ていうシーンがある。
ビルがものすっごくまずそう~~に食べるとこが笑えた。
料理がアップになったけど、本当にまずそうだった。
だけど、いかにも「まずそうな」料理を作るのって、なかなかテクニックが必要なのではないかしら?(笑)
それと、どうも、ヴェジタリアンて変な人が多いのかしら。
(私も変な人かもしれないけど・笑)
映画に登場するヴェジの人って、大抵笑いをとるために出てくるし。あ、ゲイもか。
最後に出てくる男の子も、一応ヴェジだった。かわいい子だったので、良かった(笑)

とあるタレントが「カルメンて(ジェシカ・ラング)愛情深いから、動物と会話するような人になっちゃったんですよね」みたいな解説をしてたけど、私は違うよ~と思った。
人間とうまくコミュニケートできない人だから、動物に逃避してるんだよ、彼女は。
映画評論家って、かなりハズシテルことが多いのね。なんで?
そして、登場人物の皆が、コミュニケーションがうまくできない、いい年した大人たち。
でもそれが、普通だったりするのね。皆、生きるのがへたくそで。
自分がわからないから。死ぬまで自分とは対話し続けるのだろうけど。

というわけでジャームッシュは、脳の刺激剤に最高です。
他の監督には刺激されない部分にくるな。

余談ですが先日「君とボクの虹色の世界」を観たのですが、あれもギリギリのセンスでやってるのはわかるんだけど、かなりハズしてた。
一歩間違うと、ダメ。バランス感覚って微妙だわ・・・。

ブロークンフラワーズ [DVD]
ビル・マーレイ (出演),‎ ジェフリー・ライト (出演),‎ ジム・ジャームッシュ (監督, 脚本)