レディ・イン・ザ・ウォーター

2023年7月15日

もう、公開してすぐに娘と観に行ってたのですが、感想をまとめる時間がなかったというか、書きそびれていた。

水というのは実に神秘的。
水の中に、何か人間の常識を超えた存在があったとしても、なんだかつい信じてしまいそうになる。

シャマラン作品は、実に独特だ。
他の監督が決して真似できない、脳のどこか、いつもと違う部分を刺激してくれる貴重な存在である。

私は、先入観を排除するために、なるべく予備知識なしで映画を観にいくことにしている。
歴史ものなんかだと、ちょっとお勉強していかないといけないけど・・。
今回の作品も、絵本になっているとは知らなかったのだが、
冒頭部分から、なんだか絵本みたいだなあ、と思いながら観ていた。
話が進行するにつれ、日常と空想を巧みに融合させたその不思議世界に、すっかり入り込んでいる自分がいた。

絵本とかコミックなんかの世界にしても、細かいディティールの説明なんかはすっ飛ばしていることが多い(というかほとんど説明的ではない)。
細部の説明よりも、全体の雰囲気とか、大まかな流れのほうに注目して楽しむ、という趣向なのではないか。
あとは、ビジュアル的ディティール、例えば登場人物の衣装とか、インテリアとか、映像の陰影や色彩感といった創造的な世界を楽しむ。

ファンタジーは当然のことながら、空想の世界である。
しかしそれを、多くの人たちが現実逃避のために使っているように思うことがたびたびある。
どんな場合でもそうだが、逃げていては、永遠に真実を手にすることがない。
そして、心は癒されない。
ファンタジーは、現実をよりよく知るためのツールとして存在すると思っている。

シャマラン監督の好きなところは、ファンタジックなストーリーを、現実的な考え方のヒントのようにとらえていく視点である。
というか現実の誇張のようにも見える。
こういうところが、実に共感できる。


ポール・ジアマッティーさん、やはりすごく上手い。
「シンデレラマン」のときもとっても良かった!!
とっても善良な雰囲気の役柄にはぴったり。
というかこの人が悪役やることって、あるんだろうか・・
あったら面白いかも♪


ブライス・ダラス・ハワード、この神秘的な役によく似合っていた。
「ヴィレッジ」のときも本当に存在感があって、若いのにものすごく迫力のあるしっかりした演技のできる人なんだなあと驚かされた。すごく才能がある人という印象。
大物の貫禄が感じられる人。


登場人物の設定も、それぞれすごく個性的でおもしろいのですが、とくに、右腕だけ鍛えてるという人がいいキャラしてる。
娘も気に行っていた。
メガネをかけた評論家の人も面白かった。
あと監督自身も重要人物として登場。なかなかイケメンさんです♪


このアパートはセットだそうで、うしろがないんだって(笑)
びっくり。
なかなか面白いデザイン。

娘はごくごく自然に、フツーにこの作品を楽しんでいた。
それで、そういえば、私もしょっちゅう、意味不明の創作物語を語って聞かせていたよなあ、と思い出した。
どんなに意味不明でめちゃくちゃな話でも、小さな娘は真剣に私の話を聞いていたものだった。

私の隣にはシャマランのファンなのだろうか、30代くらいの女性だったけど、いちいち「ほおお・・・」とか「おおっ」とか、リアクションが入るので、なんだか面白かった(笑)。
私の前の席はクリエイターらしきフランス人の女性二人連れで(すごくオシャレだった♪)、
終わったあとかなり熱っぽく語り合っていた。
確かにシャマラン監督はクリエイターに人気があるのではないかと、彼女たちを観て想像したのだった。

キーワードやセリフに、時々どきっとさせられることが多い。
スピリチュアルな言葉が多く登場する。
なんとなく、シャマラン監督にとって、こうしたスピリチュアルな言葉は、特別なことではなく、ごくごく普通の日常のことなのかもしれないと思った。
さすがにインド人だなあと思ったりする。
素敵な感性の監督だと思う。

この作品は、実際に彼が自分の子供に語って聞かせた、ベッドタイム・ストーリーで、
絵本にもなっている。
この絵本、購入しましたが、素晴らしい。
まず、イラストがすっごく美しい。クラッシュ・マクリーリーさんという、キャラクター・デザイナーの手によるもの。
語り口も、いかにも子供に話して聞かせているという雰囲気。
こうして絵本を読むと、この作品をさらに深く理解することができる。
やはり絵本の世界がそのまま映像化されたのだなあ、と思った。