『ブライト・スター いちばん美しい恋の詩』

2023年6月4日

本当に綺麗な映画でした。
感動でした……!!
そして、なんとも悲しい恋物語……。
切なかった。

恋愛も悲しいのだけれど、ジョン・キーツの人生そのものが、あまりにもはかなくて悲しかったのです。
短い人生だけど、濃密で美しい……。

ジェーン・カンピオン監督作品『ピアノ・レッスン』が大好きでたまらなくて、当時あの曲をピアノでしょっちゅう弾いていたほどでした。
そして叙情的な映像美に虜になり、何度観たことか。
助演女優賞受賞のアンナ・パキンの海辺で海藻を手に踊るシーンが印象的でした。
ホリー・ハンターの着ていた黒いドレスがすごく素敵で、まあ、同じようなドレスは無理だからとりあえず黒いロングのワンピースを着て気分に浸ってみたりね。
自分のなかでは、今までの人生の中でかなり好きな映画上位ランキング、という感じです(詳しくランキング決めてないけど)。
そういうわけで、大好き映画だったし当時かなり刺激を受けていたというか影響受けていました。

『ブライト・スター』を観ながら、『ピアノ・レッスン』を観て感動していた時の感じがよみがえるように思えました。

ジョン・キースの詩の言葉が、音楽のごとく散りばめられていて、美しい映像に見とれるばかりでした。

奥ゆかしく、控え目なカンピオン監督の演出は、だからこそ人物の内面を表現してじんわりと観るものの心に沁み渡っていく。
2人の情熱が、終盤にいくにつれてじわじわと心に迫ってきて、結果はわかっているのに泣けました……。

私としては、大好きなベン・ウィショーが観たくて!!
それはもう、大変素晴らしかったです。
細くてはかなげな芸術家キーツは、まさにはまり役。
彼は、こういう芸術家の役がすごく似合います。
以前はキース・リチャーズやボブ・ディランもやってたくらいの人だし、『パフューム』では”連続殺人犯”なわけだけど、香水作りの天才という役でした。

他にはない、彼の持つ独特の個性と存在感が素敵です。
彼は泣きながら脚本を読んだといいます。

青い燕尾ジャケットにベスト。
うーん、やっぱりドレスよりもジャケットが着てみたい……。

キースの恋人、ファニー・ブローンは針仕事が大好きな女の子。
シーンごとに変わる素敵な衣装には感動でした。
すべてを写真集にしてほしいくらいでした。
デザイナーの解説付きで。
衣装デザインは、アカデミー賞にノミネートされていました。

布や毛糸などを触っているだけで癒されてしまうというほど布好きの私にとって、それはもうたまらないシーンがいっぱい。ムラムラとしてしまって……!(笑)

特に、全てが手縫い、というのもいいんですよね。
針穴に糸を通す瞬間とか、針を布を刺す瞬間とか……
帰宅してから、何か作りたくてたまらなくなりました。

客層は圧倒的に女性が多く、その中に白髪の紳士がちらほら、という感じでした。
オシャレな人も多くて、ナチュラル&ガーリーなファッションの人が目立っていました。

キーツの親友であり、理解者であるブラウン役のポール・シュナイダー。
『ラースと、その彼女』ではラースの兄をやってたり、『ジェシー・ジェームズの暗殺』にも出ていました。
今回の作品では全米映画批評家協会賞助演男優賞受賞。

『ラブ・アクチュアリー』でリーアム・ニーソンの息子役をやっていたトマス・ブローディ=サンスターが、ファニーの弟役でしたが、あまりにも背がのびてスラ~リとしていてびっくり。
彼のかぶっていた麦わらのシルクハットが可愛かった。

他にも、スカーフ使いとか、今の生活の中にも取り入れてみたい着こなしのエッセンスがいっぱいでした。

家にあったキーツ詩集。
映画のとは翻訳が違っていて、それもまた楽しいのです。
んー……というか、こちらの翻訳の方がいいですね。
昭和54年の初版本です。

古い本の装丁や翻訳や、紙や書体って大好きで、こういう古本を見つけるのを時折楽しんでいます。
(つい、読めもしない外国語の本なんかも買ってしまう)

また『ピアノレッスン』観たくなりました!