ミス・ポター

ピーターラビットは、お子様のいる家ならごくごく普通に家の中に存在しているキャラクターなのではないでしょうか。
私も娘と一緒に楽しく読んでおりました。ウエッジウッドのマグカップもあります♪

絵が非常に美しいだけでなく、物語もとっても面白いんですよね。
ユーモアのセンスや人間社会の縮図を可愛い動物達が演じる楽しさ。
風刺がきいてるところも感心しつつ、何度読んでも面白くて笑ってしまいます。
そして皆、上品でオシャレなところも素敵。
周囲の、美しく描かれた木や草花などの自然にも癒されます。
私のお気に入りはカエルの紳士ジェレミー・フィッシャーどんですね~。
彼の友人関係なども最高ですね(笑)。


今回の映画は大好きな作品「ベイブ」の監督さんだし、レニー・ゼルウィガーとユアン・マクレガーの組み合わせ。これは本当に素晴しかったです。
きっちりとした美意識と作品に対する真面目な姿勢に、大変好感を持ちました。

ビクトリア時代の風俗や衣装、インテリアにはもう、目を皿のようにして見入ってしまいましたね(笑)。
ひとつひとつがとても丁寧に選ばれそして作られ、配置されていて、何もかもが上質で美しくて、それがゆったりとして落ち着いたカメラワークで表現されており、また、抑えに抑えた演出にも感動しました。
衣装担当はアンソニー・パウエル。美術はマーティン・チャイルズで、私はもう、ビアトリクスのお部屋に完全に参っていました。あのお部屋に住みたい~~
そして冒頭から気になってしかたがないのが彼女の絵の道具類です。
素敵なバスケットに収納された絵筆とか!筆のかたちや紙の材質なども気になって気になってしかたがなかったですね~。
一番好きなのはノーマンがビアトリクスにプロポーズして、それから見送るまでの、あの静かな緊張感のある流れと演出、そして俳優さんたちの演技。
あの時代の人たちの、実に実に控えめで奥ゆかしい感情表現の、なんという美しいことでしょう。
あと駅のシーンもいいですね~~。レニーも素晴しいのですが、あそこで最高に魅せてくれているのはノーマン役のユアンですね。彼は本当によかった!


ビアトリクスの母に象徴されるように、あの時代のイギリスでは身分の高い女性が仕事を持つことなど考えられず、とにかく結婚が女性の幸せとされていたんですね。
そういう時代に経済的には何不自由なく育ちながら、ビアトリクスには絵を描き、物語を作り出す才能が与えられていました。これはもう天才の宿命というか、天から与えられた役割みたいなものを感じました。
彼女は子供の頃からごく自然に絵を書き、物語は自然発生的に生み出されてきたんですね・・・
そしてナショナル・トラスト運動へとつながっていくわけで、その流れは最初からそう決まっていたかのようでした。

事実は小説よりもなんとかって言いますが、本当にリアルな人の人生って凄いなあとあらためて思いました。
まるで何かに導かれるようにして人と出会い、最初の本が作られていく過程は、感動的です。印刷所に自らおもむき、色などにあんなにこだわれるなんて!
なんかすごくうらやましくもありましたね。
本のサイズや書体の指定などもしてましたね。素晴しい美意識。

ところで私は、現在のピーターラビットの絵本の、あのピカピカツヤツヤの白い表紙が好きではありません。今回映画を観て、つくづく雰囲気ぶち壊しだなと思いました。
初版本が書店のウィンドウごしに見えるところ、感動でした!なんと美しい!
もしも初版本のイメージそのままの復刻版があったら絶対買いますね~。
ノーマンの姉で、ビアトリクスの親友をエミリー・ワトソンが演じておりましたが、彼女もまたいつものことながらいいですね~。知的で意志の強そうな目が印象的です。
そうそう、彼女のロングスカートにネクタイというファッションが素敵でした。


湖水地方の風景はもちろん素晴しく、まだ地球上にこんな美しい場所が残されていることに感動しました。
芸術家であり、ナチュラリストであったポターという女性の存在、あらためて偉大な人物だったことが確認できました。
また、芸術家は皆とても孤独です。ビアトリクスも、身近である家族には本当の理解は得られなかったようでした。しかし、必ず真の理解者、支えになる人の存在があること、そんなことにも心を癒されました。