シャネル&ストラヴィンスキー


めちゃくちゃ混んでたりとかいろいろあって、最前列で観るはめに。
でも、Bunkamuraの最前列って結構大丈夫でした。Bさんの言ってたとおりでした。

2人の芸術家の感性の出会い、そこには化学反応が起こったとしか言いようがありません。
出会うべくして出会ってしまったというか。

時は1920年。アール・デコの時代ですね。
インテリアにはアール・デコ調の装飾がたくさんで、しかもそれらはココ・シャネルの好きな白と黒の趣味の世界に統一されており、実に楽しく興味深く観ていました。


「春の祭典」の初演は大ブーイング、公演が中断する事態にまでなってしまう。
芸術家としては魂を注ぎ込んで作り上げた作品にケチをつけられるわけですから大変な苦痛であったと想像できます。冒頭の初演シーンには胸がしめつけられるようでした。

それにしても、今は名作としてあたりまえのように上演されるバレエやオペラなどの作品では初演がブーイングだったというものが意外にも多いんですね。
芸術家は時空を超える感性で作品を創造しているのか、大衆がそれについていけないというパターンは多く発生するようです。
大抵は、今までになかったもの、とか、今までと逆の発想で刺激を与えるものという形を持って生み出されることが多いのではないでしょうか。
だから初めてそれを観たり聴いたりした時の人間の反応の一番簡単なのが”拒絶”なのでしょう。
ココ・シャネルは常に既成概念を壊すことをやっている人なので、ストラヴィンスキーのような感性とはすぐに共感し、2人は多くを語らずともお互いの中に同じものを見出すのです。
「春の祭典」はこうしてみると、あの時代にとっては実に挑戦的な作品であったことがよくわかりました。
そして、シャネルもまた同様に、常に時代に挑戦し続けた女性であったのでしょう。
服飾と音楽という、表現方法は異なるけれども、芯に同じものを持つ2人なのです。


それはそうと、初演大失敗の舞台裏で、ストラヴィンスキーが、かのニジンスキーに対しキツイ言葉を投げつけるシーンには、観ているこちらが冷や汗でした(笑)。
体格のガッチリして睨みのきくマッツ・ミケルセンに対し、ニジンスキー役は透き通るように色の白く線の細い人で。
というかバレエ・リュスを生で観てるってだけで私などは大変なことだと思うのに、ブーイングだなんて、なんてもったいないと思いました。

この映画の一番の見どころは、何といってもマッツ・ミケルセンのストラヴィンスキーでした。
最前列で彼の大大大アップを堪能できて幸せでした。
大変情熱的にピアノを弾きまくる演技、良かったですね~やはりマッツさんは期待以上のことをやってくれる人だなーと感激しました。
ストラヴィンスキー氏の写真を見ても、雰囲気似てますね。
マッツの持つ独特な色気とか個性も、うまく生かされていて、なんとも魅力的な芸術家像でした。
しかしですね、ストラヴィンスキーさんは腕立て伏せでカラダを鍛え、その後に何をするのかと思えば生卵をグラスに割りいれて飲みほして・・・ってまるでそれじゃあ”ロッキー”じゃありませんか。
で、次にどうするのかというと、何とピアノに向かって作曲!!
体育会系な作曲家なんですね、ストラヴィンスキーさんて。
あそこは別に、笑いをとるところではないとは思いつつも、なぜかツボにはまってしまい、笑いをこらえておりました。
あとで娘も同じくあのシーンは面白かったと言って、2人で大笑いでした。
マッツさんのマジ顔が笑いを倍増させていたことは間違いありません。
BGMにロッキーのテーマだったらぴったりでしたよ絶対。
そういうキュートなマッツさんもあり、シャネルさんとのセクシーな場面も多々あり、また、ファッションも素敵で、何だかんだとお楽しみが盛り沢山でした。
特に私が好きだったのは普段着のニットのファッション。
ざっくり手編みのセーターやベストにシャツとネクタイ、ぴったりとなでつけた髪に丸いメガネ。
クラシックなメンズファッションがどれも素敵でした。


シャネルを演じるアナ・ムグラリスの美しさに溜息でした。
すでにシャネルのモデルも務めていることもあってか、シャネルのブランドイメージそのままに堂々と歩く姿、あたかも自分のデザインした服を着るご本人のように着こなされていました。
長身、そしてなんという首の長さ。
着替えるごとにドレスの着こなしの見事さに見とれていました。
彼女が歩き、動くと服のラインがいっそう美しく見えます。
低音のハスキーな声と強い目の光に、シャネルご本人の持っていたであろうカリスマ性と人を圧倒させるエネルギーを感じさせます。
男性にはエスコートさせず、一人で堂々と歩く姿はカッコイイです。
本作でシャネルの人生について大分勉強になりました。
下積み時代がオドレイ・トトゥ、全盛期をアナ・ムグラリス、熟成期がシャーリー・マクレーンという感じでそれぞれに楽しめました。

知れば知るほどに凄い人だなあと思うばかりです。
そして、どんな時も仕事=創造することへの情熱を忘れることがない生き方に、感動しました。
衣装製作にはカール・ラガーフェルドとシャネル社が協力しており、デザインはどれもオシャレの本質を見せてくれるようでした。

リベンジ公演、シャネルが衣装担当の「春の祭典」だなんて何という贅沢な舞台だったことでしょうか。しかもピカソ、コクトー、ルネ・ラリックも制作に参加しており、その豪華なメンバーにはクラクラしますね。これで文句言ったらバチあたりますって感じです。
舞台のシーンはなかったので、どんなだったのかとものすごく気になりました。

シャネルとストラヴィンスキーが、離れていても繋がっている、というシーンがあって、それがとても心に残りました。


もう一度観に行きたいなあ~と思っています。
細かいところまで本当によく気を配って作られているので、何度も観て、感性を磨くのです。

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シャネル&ストラヴィンスキー [Blu-ray]
マッツ・ミケルセン (出演), アナ・ムグラリス (出演), ヤン・クーネン (監督)