サンキュー・スモーキング
最高のブラックジョークでした。痛快でしたねー。
とくに、私のような立場の人間にとっては。
というのも、私はもはや、この世はすべてがブラックジョークにしか見えなくなりつつあるからです。
ロビイストの存在は知っていてどういうことをしているのか理解していますし、社会の構造の裏、表もいろいろ知ってしまったという思いがあります。
時々、ポストに、”砂糖はカラダにどんなに良いか”ということが書き立ててあるパンフレットが入っていることがあり、
「おやおや、わたしのところにこんなもの入れちゃってまったく」
と、もうそれはブラックジョークでしかないんです。
この作品を観ていても、根底に静かな「怒り」が存在していることを感じました。
それを痛快なジョークで笑わせてくれて、なかなか”大人”な作品。
最近は社会派映画もこうして堂々と表に出るようになってきて、楽しいものです。
今年だけでも、ずいぶんいろいろ観ましたねー。
これと似た感じで、シリアスな問題をブラックユーモアに描いていた作品としては「ロード・オブ・ウォー」が良かった。
彼らが売っているものは、死。
冒頭の導入部分の映像、タバコのパッケージデザインを使ってグラフィカルにキャストの名前などを見せてくれたのは、すごくセンスが良くって、面白かった。
しかしタバコは最近そうとう悪者あつかいになっているけど、
私から見れば、ある意味良心的な商品ではないかと思いましたね。
だって、ちゃんと箱に「あなたの健康を害するおそれが・・・」って書いてあるじゃないですか(考えたらかなりブラックよね)。
明らかにアヤシイとか、発ガン性物質がこってり入れてあるものなんか、いくらでも平然と売られているじゃない。
認可するほうもするほうだし。
売るほうも売るほうだし。
しかし!買うほうも買うほうだ!!
でも、吸わない人にも害が及ぶから、そういうところはタバコの有害度ってかなり高いのかも。
日本の自然食業界にも、恐ろしいことを公言してる人が存在するんです。
その人は、砂糖の有害性を知ったうえで
「選ぶのはお客様ですから、自分は商売のために砂糖を使う」
と発言していて、私はそれを聞いて唖然としました。
これとまったく同じことがこの作品にも登場するんですね。
タバコ反対側のヒステリックな攻撃も、凄かった。
大量にタバコ吸って、ガンになったから今度はタバコ会社を訴える人とか。
ほんとうに、誰の責任なのか・・・。
売るほうが悪い?
買うほうが悪い?
ちょっと考えてしまいますね。
悪いものは買わないのが正解なわけ。
というか、結局「誰が悪い」とかいうことを論争してるのはナンセンスなんじゃないかって思いました。
大事なのは、自分の目で見ること。
自分の頭で考えること。
そして、選択すること。
この作品では、それをきちんと、メッセージとして見るものにつたえようとしていました。
TVを見るニック(アーロン・エッカート)。
白黒の戦争映画。
ジョン・ウェインが、タバコの火をつけようとしたとたん、銃で撃たれて死ぬシーンをやってる。
うわー、ブラックだなーと思ってたら、なんとその白黒映画は「硫黄島の砂」だった!
びっくり。本来は感動的シーンのはずなのに。。。
面白い登場人物もたくさん出てきて、楽しい。
ロバート・デュヴァル、渋い!!いかす。
子役のキャメロン・ブライトもすごく良かった!
ケイトホームズ(トムクルに言われてケイティからケイトに変えたらしい)が、記者役なのですが、この人って、なんかひと癖ある女の役がなぜか似合う。なんか、したたかそうなイメージが強い(笑)。
う~ん、彼女ってタダモノじゃないのかも。
カウボーイを買収しにいくところなんか、ワクワクしましたね。
”いかにも”って感じの家の、ドアの前まで行って、いったいどんなカウボーイが出て来るのかと思ってたら・・・、
こんな人(サム・エリオット)がイキナリ散弾銃構えて登場!
ウケました・・・。
細かい部分のディティール、たとえばネクタイとか、セットなどにもきちんとこだわりがあって、監督のデザインセンスの良さを感じました。
まだ新人ということですが、今後の活躍が大いに楽しみな人です。
フィニスター上院議員(ウィリアム・H・メイシー)のお部屋。
彼のネクタイの柄にもご注目。
ネクタイは人を表す。
このインテリアがまた凝ってて面白いのです。
この議員、自分のことしか考えてないの(笑)。
“モッズ特捜隊”密談中。
この人たちの会話、かなり面白い。
アルコール業界、銃製造業界のPRマン。
あとからお仲間が増えるのも可笑しかった。
このマリア・ベロさん、かなり好きかも(笑)。
ついでに、肉とか砂糖とか農薬なんかもやってくれと思った(笑)。
それにしても、ディベートの達人にはやられました。
なるほどなるほどと、かなり勉強になりました。
アーロン・エッカート、かなり気に入りました。
この大きな口とか、なんとなく古風な顔立ちとか、テンションがイイ。
ブラック・ダリアのときの演技も、どっかキレてるっていうか、好きなタイプです。
なんでもネクタイの柄とかにこだわっているとか!
気がつかなかったので、また確認しに行きたいです♪
公式サイトのあちらこちらで、いろいろなパロディーをみつけて面白かった!
ネクタイはバーガンディー色。
タバコのパッケージのイメージカラーだそうです。
ラッキー・ストライクの箱のデザインは、かのレーモンド・ローウィ氏です。
1941年(白地に赤丸のやつは1942年のデザイン)のデザインですが、まったく色あせることなく、これほど長い間オシャレなパッケージはないですね。
余談ですがこの作品を観ていたら、藤子不二雄の「ミノタウロスの皿」を思い出しました。
人間と牛が入れ替わった星のお話で、視点が面白く、ベジタリアンになる前からこの話がとても気に入っていました。
あと、藤子先生の異色短編集は1~4あって、どれもブラックユーモアで面白いです。大人向きです。
ちなみに、藤本先生は他界されていますが、我孫子先生は菜食という記事を、以前読んだことがあります。
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アーロン・エッカート (出演), マリア・ベロ (出演), ジェイソン・ライトマン (監督, 脚本)
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