ママの遺したラヴソング

ええと、いわゆるお涙頂戴的な人情話はかなり苦手で・・・

この作品も、もしもそんなだったらかなり忍耐が必要だし、どうしようかな~と、長いこと行こうか行くまいかと悩んでいたのですが、
結局、予告編の雰囲気になんだかとても惹かれて、劇場に足を運んでいたのでした。


でも、よくよく考えてみれば、このキャスティング。
S・ヨハンソンもトラボルタも、決して甘すぎない顔です。

観て良かったです♪

あとでこの渋いデザインのポスターを発見し、ずいぶん日本国内で売り込んでるイメージと違うことにまたもや驚きました。
この暗い影の素敵なポスターなら、なにやら「文学的」なイメージ、あるではないですか。
そう、この作品はセリフの中に、アメリカ文学作品からの引用がたくさん使われていて、それがとても適度な重厚さとストイックさと小粋なアメリカ人の雰囲気に溢れているんです。
それで、とっても素敵な作品だったのです。楽しかった~。

映画が始まってしばらくして、いい脚本だなあ・・・と思いました。
セリフのひとつひとつがとても大切に選ばれていて、とてもきれいで、心に響くんですね。

トラボルタの役なんか、アメリカ文学によく出てくるアル中の生活破綻者で、負け犬パターンの生活にどっぷりで、だけどタダの負け犬じゃなくて実は天才的な才能があったりするっていうキャラ(笑)で、実に楽しく演じてくれてました。
私は、ヘミングウェイとかアーサー・ミラーなどが学生のころ大好きでしたので、個人的にかなりツボな部分が多かったです。


ジョン・トラボルタといえば、私には「グリース」のイメージが強くて、テカテカリーゼントに皮ジャンスタイルの、歌って踊る不良少年(笑)。
「グリース」大好き。

今回は白髪でアル中で病気だしですっかり枯れていて、そんな彼がダンスしたり、ギター弾きながら歌ったりすると、これがなかなかどうして、やっぱりすごくサマになるんですねえ。

S・ヨハンソンも、化粧っ気のない自然な雰囲気が良くって、それにこういう作品に登場するとき、彼女の顔立ちは甘すぎなくっていい感じです。


ヨハンソンの着こなす、母のかたみのヴィンテージドレスの数々は、とってもオシャレで、素敵でした。
かわいい!!
洗いこんだTシャツにジーンズも良かったなー。

また、インテリアに大注目でしたねー。
最初の汚~~~い(笑)ボロボロの家が、だんだんと綺麗になっていく様子は見ていて楽しくってたまりませんでした。
まるで、アメリカのTVお得意のリフォーム番組みたいで(笑)。
ラストシーンの、インテリア雑誌みたいな美しい室内の様子には思わず「おお~~」っと感激でした。色彩の使い方もとーーーっても素敵♪
ニューオーリンズの街も、またその撮り方も、とっても良かった~。
いかにもアメリカ南部の、くたっとしてリラックスした田舎町的雰囲気が良かったな~


ヨハンソン扮する、パーシーをとりまく、やさしいオヤジたちのキャラもまたそれぞれに味があって、すごく良かったですね。
この、子供用プールに浸ってるオヤジさんなんか、実はすごい有名なサックス奏者だったり(笑)。
しかしこの、グタ~~っとした裏庭の雰囲気の出し方がとても上手いです、演出。


トラボルタ扮するボビーは、常にこの赤いペーズリー柄のガウン姿(笑)。
で、この画像はクリスマスだから一応、ネクタイはして、フォーマルなのです(柄がまたイイ)。しかし、足元はオヤジサンダルなのです(痛風だか水虫だかで、靴がはけないのです☆(汗))
「シークレットウィンドウ」のジョニー・デップの、破れガウン姿と並べてみたい・・・(笑)

もうひとりの同居人、ローソンもとても素敵なのですが、親子の間のクッション材となっていて、なかなか上手い演出でした。
結局、お母さんが亡くなったところから始まるので、母の映像は一切出てこないというところも面白かったです。
これは父と娘の、回復と癒しの物語だったのでした。

監督はシェイニー・ゲイベルという女性で、今回がフィクション初監督作品。
とても丁寧で繊細な映画作りと人間描写には、すっかりファンになってしまいました。