マリー・アントワネット

2023年7月15日

原題:Marie-Antoinette
監督 ソフィア・コッポラ
脚本 ソフィア・コッポラ
原作 アントニア・フレイザー著
『マリー・アントワネット』Marie Antoinette: The Journey
撮影 ランス・アコード, A.S.C.
編集 サラ・フラック(英語版)
上映時間 122分
製作国 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国

マリー・アントワネット キルスティン・ダンスト 園崎未恵
マリア・テレジア女帝 マリアンヌ・フェイスフル 片岡富枝
ノアイユ伯爵夫人 ジュディ・デイヴィス 滝沢ロコ
ルイ16世 ジェイソン・シュワルツマン 佐久田修
デュ・バリー夫人 アジア・アルジェント 宮寺智子
ポリニャック伯爵夫人 ローズ・バーン 小島幸子

素晴しい。

ひとことで表現すると、美しい映画、です。

装飾の限界まで飾りたてたのではと思えるくらいにコテコテゴージャスなヴェルサイユの生活スタイルを、ガーリッシュに美しく、最先端のセンスで仕上げたソフィア・コッポラの素晴しい感性。

ただただ、ため息でした。

「ヴァージン・スーサイズ」も「ロスト・イン・トランスレーション」もとても好きな作品で、S・コッポラのセンスの良さは誰もが認めるところではありますが、私も大好きです。
この「マリー・アントワネット」も、「ヴァージン・スーサイズ」がそうであったように、後々にまでその映像美は語りつがれていくことでしょう。
公開前から、各ファッション誌ではどこもみんなアントワネット特集でしたねえ。
業界の人なら、だれでもチェックしてるんでしょうね、きっと。

こんなセンスの持ち主、他にはいません。

ほんとに勉強になりましたし、良い刺激になりました。
観終わると、クリエイティブな感覚がビリビリ刺激されてしまい、何か作りたくて、手がウズウズしてしまいましたね~
楽しいだろうなあ、こういう作品の作り手は。

某所にレビュー読みに行ったら、かなり批判が目立っていましたけど、「可愛そうにな」と思いました。
このセンスが理解できないということはつまり、センスなし、ってことですからね。
気の毒に。
こういう作品を観て、センスを磨けば良いと思いますけども。

とにかく、画面に目が釘付けになりまして、ものすごく目が疲れました(笑)。

靴も、ドレスも、扇も、帽子も、インテリアも、それから料理や御菓子の色彩も、なにもかもが素敵。
花の使い方なんかもう、ほんとうに素晴しいです。

シーンごとに違う衣装・・・、レースやリボンや、飾りの花や、ギャザーや布の質感や、下着、それに男性の上着の裏地までが気になって気になって。
いくら観ててもあきないですねー。

ストーリー的には、オスカルとアンドレのいないベルばら、といった感じ(笑)。
歴史モノというよりは青春映画ってノリでした。
人物の内面描写は、いつものソフィアの感じで、さらっとしてるんですね。
なんとなく、ウッディ・アレンとかジャームッシュ的に、ちょっとクールに離れた視点を感じますね。
それが彼女の持ち味であり、ニクイですね。
だって、ヴェルサイユでベタベタドロドロな愛憎劇みたいの、今更イケてないわよ、って感じ。

私が一番気に入ったのはクラブ(というか夜会)のシーン。
すっごい良かった~~最・高にオシャレでした!!

女たらしのフェルゼン、すっごくカッコイイ!!
でも、フェルゼンてそういうキャラだったっけ?まあいいかー(笑)
どっちにしてもカッコよかった~。ジェイミー・ドーナン。
見た事ないお顔だなあと思ったら彼、今回がデビューだそうで!
なんと、キーラ・ナイトレイの元カレらしいです。
監督曰く「今まで見た事ないハンサム」にしたかったらしい。
こういうところもいいですねえ、彼女。

ルイ16世のジェイソン・シュワルツマンは、すっごく似合ってましたね。
彼は最近あちこちよく出ていて、その個性的ながらもすごく達者な演技力に、ちょっと気になる存在でした。
「ハッカビーズ」とか、すごく面白かった♪
ソフィアのいとこだったんですねえ。

主役のキルスティンダンストは、美人じゃないとかいろいろ言われてますが、私はあのファニーなお顔やスレンダーな身体とか、すごくキュートだと思っていて、好きなんですよね。
服の着こなしもセンス良いですし。
男性でも女性でも、スクリーンで素のときのセンスの良し悪しが出ますね。
某俳優さんのパンツの着こなしで、百年の恋も冷めた、なんてことがあったわ(いや、百年も想ってないけど)。
だって、今時ウエストでパンツはいてるんだもの・・・。ありえないわ。

しかし、アントワネットにしても、ルイ16世にしても、子供なんですよね。
周囲にサポートする人物もいないし。
ろくに教育も受けていないで、いきなり政治任されても、無理があったでしょうね。
たしか「ベルばら」の中でオスカルが、ロザリーの家でスープを勧められるシーンがあって、貴族と平民の生活ギャップを思い知るんですよね。
ああいうことでもなければ、平民と交流のあるオスカルでさえ、彼らのひもじさや辛さは理解できなかったでしょうね。
フツーにケーキがその辺にゴロゴロしてる日常。
(でも、この映画に出てくるようなカラフルで生クリームたっぷりの御菓子って、当時はなかったそうです。砂糖もまだ、貴重だった時代のようですね・・・映画の中のように毎日あんなに御菓子食べてたら、確実に命が縮まりますね・・・)
完全に隔離されたヴェルサイユは、なんだか現実離れした特殊な世界に思えました。

そう、プチ・トリアノンはまるでテーマ・パークだし♪
でも、ソフィアの描くヴェルサイユ風カントリーが素敵でした。私も住みたいです~。
プチ・トリアノンでは王妃も白い飾り気のないドレスで、すごく素敵でした!
娘もくるくる金髪巻き毛にドレスで、お人形みたいに可愛くって。
ヴァージン・スーサイズ、ヴェルサイユ版て感じでしたね♪

あと、セリフのないシーンがとくに最高に良いです。
実に美しいのです・・・。
全編、この調子でえんえんとセリフなしでいってくれてもいいくらいです。
これはソフィアの得意な手法なのでしょうけど、今回はかなり上質な感じで、これは凄いなあ~と思いました。

また、これもソフィアの特徴か、性的描写を極力抑えるところも、私は好きな部分。
生ナマしい演出って、イケてないですからねー。
よく、作品的にはすごくいいのに、”濃厚なベッドシーン”とか、長ーいキスシーンとかで一気に引いちゃうことがありますね。気持ちはわかるんだけど、どうもダメですね。
映像では観たくないというか。
そういうのは”観なかったことにする”ことが多いです。


これは、カジノ・・じゃなくて賭博で遊んでるシーン。
チップもピンクで、素材は・・貝かなにかでしょうか?
とても綺麗でした。

私は、人間は皆、生まれつき創造的なのがあたりまえだと思うのです。
全ての人間が。もちろん、レベルは様々で。
でも、生まれてからの教育や、周囲の影響によって、その創造性は失われていくのではないかと考えています。