白いリボン
DVDは絶対に購入して、何度も観たい作品です。
ずーっとまだか~まだか~と待っていた作品だったので、やっと観ることができて感激でした。
2時間24分と長く、また、これはハネケ監督の作風ですが、あまりにも語り過ぎないというか・・・ひたすら静かに時が流れていくのです。
どれだけ語らずに、ひとつのシーンの中に表現されていくか、という感じで、語らないことがかえって、そこに含まれることの無限さを表しているような。
一度しか観ていないので、どうにも歯がゆい。
どうしても再度観ないと気が済まない、それはあまりにも、無意識の部分でモヤモヤとしたすっきりしない余韻が自分の中にあって、なんとかしてそういう未消化部分をちょっとでも消化したいという思いです。
とはいえ、そういう映画をこよなく愛します。
映像がもうとにかく美しいです。
ただただひたすら、見とれていました。
その美しさに溜息をつきながら、長い時間息をひそめるようにして観入っていました。
モノトーンの世界は、想像力を何倍にも増幅させてしまう。
圧倒されました。
2009年のカンヌ映画祭でパルムドール受賞というので話題になっていたようで、
観に行った日は満席で、あまり広くない銀座の劇場はすごい混雑でした。
友人が前日にネットで席を確保してくれなかったら観れなかったと思います。
友人に感謝です。本当にいつもありがとうございます!
計算されつくしたシーンが続いていきます。
なんと、カラーで撮影したのちにモノクロにデジタル変換したそうです。
村の風景、家の中のインテリア、照明の暗さ(ろうそくや石油ランプの光)、そして髪型や衣装、食器などの小物などなど・・・、それらはおそろしくこだわって選ばれ、作られていることがうかがえます。
こうして画を並べてみても、どこを切り取っても飾っておきたいくらいの完成度の高さに、唸ってしまいます。
うーん、凄い。素晴らしい・・・。
そしてまた、この美しさが怖いくらいに刺激的なのです。
ちょっと困ってしまったのは、登場人物の多すぎることで、名前と顔を、一度観ただけでは把握しきれないこと。
(私の記憶力が悪いせいです・・・)
とまどいながら観ていましたが、終わりごろにはなんとか少し覚えることができた、という感じ(汗)。
モノトーンだし、服や髪の特徴も似ているしで余計にわかりにくい。
どの子がどの家の子か、と覚えるまでちょっと時間がかかりました。
けれども、そういうことにあたふたさせてくれる映画って、他にない気がします。
これも監督の仕掛けた”遊び”なのでしょうか?だとしたらすっかり遊ばれている私・・・。
遠い国の小さな村のこと、ではない。
すぐそこに存在し得る、人間の本質的な恐ろしさ。
血も出なければ殺人現場もない、けれどもその目に見えない恐怖は日常にも存在するのだという警告みたいに思えました。
監督はこの映画について「すべての事件に、論理的な説明がなされている」と語っているのです。それを知ってさらに衝撃でした。
そして監督は、明確に描かないことについて、
“私が観客を信じているからです”
とも語っています。
観客に考えさせる、ということはつまり、観客に考える自由を与えてくれている、ということなんですね。
つい、考えることをおろそかにする我々への働きかけ。
それも、とても紳士的な表現でやってのける。
そういうハネケ監督の感性が大好きなんです!
ミヒャエル・ハネケ監督は、心から大好きで尊敬している作家で、監督というよりも”芸術家”というほうがしっくりするような、そんな人。
(ここでふと思う。こんなことを書くのは、奇妙だと。だって、映画監督はそもそも”芸術家”なのでした。しかしながらそうとは呼べない映画監督があまりにも多すぎるのでこういう表現になってしまったのだと。)
すごいインスピレーションを与えてくれる作品を次々と生み出しています。
次はどんな作品なのだろう?と、これほどドキドキさせられる人も少ない。
あと、インタビューで答えていることがあまりにも面白くて凄い。
過去作品を、今年は出来る限り観る予定でいます。
ハネケ監督の世界に、もっともっと浸りたい。