新国立劇場オペラ「ラ・ボエーム」


新国立劇場オペラ「ラ・ボエーム」鑑賞。

新国立劇場は、チケットの価格が低めなことと、劇場の居心地が良いのでつい、通ってしまう。
今回は2階席の2列目。
歌手のレベルとかいろいろあっても、結構楽しめる。
敷居が高すぎなくて、ちょっとカジュアルにオペラを楽しめるところ(とはいえ決して私はデニムは身につけて行くことはないしそういう人もいない)、それでいてホールの居心地の良いデザインや作りが気に入っている理由かもしれない。
なにしろ、どんなに上質のオケや歌手が来てくれても、劇場の雰囲気が悪いとどうも気分が乗りきれないというところがある。
ホールのデザインや雰囲気は重要だと思う。

この作品はやはりよくできているなとつくづく思った。
悲しくて、とても美しい作品。
物語の展開には、何度も観て知っているにもかかわらず、つい引き込まれる。
舞台の設定でも魅了される。特に、上の画像にもある2幕のカルチェ・ラタンの場面。
大人数の合唱や賑わう街の様子にワクワクする。
今回特に面白かったのは、建物がぐるっと舞台上で回って別の建物に変わるところ。

そして、なんといってもプッチーニ。
この音楽の美しさには、何度聴いても魅了させられる。
その美しい音楽を聴いているだけで泣けてくる。
3幕の雪のシーンは特に美しくて好きだ。
若き恋人たちの気持ちの強さが、その強さゆえにすれ違って悲劇となる。
それは、はらはらと落ちて消えていく冷たく白い雪にイメージが重なって、いっそう悲しげに思える。

登場人物の誰かに、特別に感情移入するわけではなく観ているが、細やかな心情にはそれぞれ共感できるところがある。

4幕の、ミミが死ぬ瞬間のシーンは本当に悲しい。
皆が気づかない、ふとした瞬間に逝ってしまうのだ。
床に落ちるマフ。ムゼッタが買ってきたばかりの。
ミミの死に気付いたマルチェッロ、気づかないロドルフォ・・・。
その数分のシーンに、哀しみが凝縮されているかのように強烈に印象づけられる。
観終わったあともその部分が何度も何度も私の頭の中に繰り返された。