スペードの女王

2020年9月12日


ボリショイ・オペラの「スペードの女王」を鑑賞。

作曲はチャイコフスキー。
原作はプーシキン。

ええと・・・

何から書いたらよいのかもう、、、、、本当に素晴らしかったです。
流石に名門といいますか、圧倒されました。
「オネーギン」も行きたいから、高価な席は遠慮して、少々遠い2階席後方でしたが、
オケの音も歌手の声も、そして指揮者の情熱も、しっかりと、ビシビシと伝わってきて、感動でした。
今日の指揮はプレトニョフ。
何と、オペラ指揮は初とか?彼のRNOも聴いてみたい。
途中で少しだけバレエダンサーたちが登場♪これは嬉しかった。
さすがにビシッと決まってました。

主役のゲルマンはガルージン(テノール)。
彼はボリショイ専属ではない(マリインスキーの方なのですね・・・てことは来年も来るのかな)のですが、ゲルマン役として特別にキャスティングされたのだそうです。
確かに彼のテノール、感情がこもってるというのを超えて、ゲルマンそのものでした。
その歌い方と声には確かな技術と説得力があり、思わず引きこまれ、心の奥に響いてきます。
リーザに愛を打ち明ける場面では、泣けました!
終盤の、壊れていく感じとかも実に見事。何度でも観たいくらいでしたね。
映画だったら何度も観れるのになあ。

伯爵夫人役のオブラスツォーワ(メゾ・ソプラノ)、ド迫力でした~~。
あとで70歳と知り、驚いたなんてもんじゃありません。
もっと若い人が、演技で年老いた風にしてるのかと思ってたものですから!
彼女は25歳からこのを何と1000回以上も演じているのだそうで、伯爵夫人そのものなのですね~いや~凄かったです。
存在が凄い。立ってるだけで圧倒されます。
実年齢的にも、本当に伯爵夫人になりきったと言えるのではないでしょうか。

舞台演出の見事さにも、感心しました。影絵のようにシルエットを多用したり、高低をつけ、橋の上と下に空間を分割して使ったり、照明の使い方もすごく印象的でした。
特に、影を効果的に使うのが面白かった。
なぜかヒッチコックを思い出してしまったり・・・。特に階段と人影っていうとね。
サスペンスタッチなのです。
衣装はオール黒!で始まり、登場する人は全員真黒な衣装。
「うーむ、この感じだときっとあとで何かインパクトのある色を使ってくるな」と思っていましたら、後半で白を使ってきましたね。黒と白。
「天使と悪魔」にシンクロしたなあ。

プーシキン自身、そうとうな賭博マニアだったのだそうで、何と「オネーギン」の原稿料もその支払いに消えたそうです・・・って!嘘みたいな話だけど、借金で本当に大変だったらしいです。
ゲルマンは自分がモデル?なんて思えるくらい、描写がリアルに思えました。

私は原作未読なのですが、チャイコフスキーは内容を変えているようです。
文庫本を購入したので、これから読んでみます。

邪な野心が身を滅ぼす、というテーマにとても意味深いものを感じます。
プーシキン作品に登場する人物たちは、どこか心に傷とか弱い面を持ち、自己破壊的なところなどになぜか魅力を感じてしまうんですね。

もっと前で観たかった、というのが素直な感想・・・。
でも、生で観れただけでも良かったです。
とても上質な時間でした。