新国立劇場「ヴォツェック」

2020年9月9日


「ヴォツェック」を鑑賞。
なんというか、一言で言うと、とても知的なオペラでした。

客層は、圧倒的に白髪紳士ばかり。
女性は少なかったし、それにいつにも増して知的な雰囲気にあふれていましたね。

内容は、貧困、殺人、不貞といった暗い面から家族の姿を描き、それは現代人の姿、生き方やあり方を象徴するかのようで、心に突き刺さってくるようでした。

そのように暗い物語を、オペラ仕立てにすることで誇張がユーモアに見えてきて、悲しさの中に笑い(苦いひきつり笑いというか)があるような、奇妙な感覚に仕上がっています。
そして同時にそれは歴代オペラへのパロディにもなっているんですね。

終わると、すごい歓声。客席は興奮して沸いていました。

とにかく素晴らしかったのは、アンドレアス・クリーゲンブルクの演出。
舞台一面に水が張られ、空中に四角い部屋が浮かんでいます。
その箱のような部屋が家族の住む家。
土台もなく、宙に浮いて、上がってみたり下がってみたり、前に出たり奥に引っ込んだり・・・。
その様子と水によって、不安定で不確定なイメージを演出しているんですね。
また、登場人物たちの衣装やメイクは、病的で不健康な感じを出していて、それがちょっとホラーっぽかったりしてなんだかとても可愛かった。

オーケストラの音に加えて、ピチャピチャ、パチャパチャという水の音が面白い効果でした。

カーテンコールの時は、指揮者のヘンヒェンさんも長靴をはいて登場(笑)。

なかなか日本では上演されないものだけに、思い切って行ってみて良かったです。
また上演される機会があれば、再度鑑賞してみたいものです。