映画『コンテイジョン』の感想

2020年5月2日

作品情報

時間:105分
原題:Contagion
製作:2011年アメリカ
監督:スティーブン・ソダーバーグ
脚本:スコット・Z・バーンズ
撮影:ピーター・アンドリュース
音楽:クリフ・マルティネス

キャスト:
レオノーラ・オランテス医師 :マリオン・コティヤール(冬馬由美)
ミッチ・エムホフ :マット・デイモン(内田夕夜)
エリス・チーヴァー医師 :ローレンス・フィッシュバーン(玄田哲章)
アラン・クラムウィディ : ジュード・ロウ(宮内敦士)
ベス・エムホフ : グウィネス・パルトロー(本田貴子)
エリン・ミアーズ医師 : ケイト・ウィンスレット(林真里花)
ライル・ハガティ海軍少将 : ブライアン・クランストン(浦山迅)
アリー・ヘクストール医師 : ジェニファー・イーリー(山像かおり)
オーブリー・チーヴァー : サナ・レイサン(沢田泉)
イアン・サッスマン博士 : エリオット・グールド

予告編

コロナウイルスの予言映画?

コンテイジョン=Contagionとは「接触感染」という意味。
ウイルスが、物とか人の皮膚とか何かに付着し、それを他者が触ることで感染が拡がっていきます。

正直なところ、ソダーバーグ作品について今まではあまり良い印象を得ていないため、この映画の公開当時も、ソダ―バーグかぁ・・・。と、完全スルーしてしまっていました。が、この(2020年)コロナパンデミックによって本作が話題に上ったので、見てみました。

そうしたら、意外にも面白かったんです!

しかしこれ、公開当時観たら、同じように感じたかどうかはちょっとわかりません。

今、リアルタイムで世界中がこの映画とかなり似たような状況だからこそ、興味深く作品に入り込んでいけたのかなと思いました。

とはいえ、ラストまで「どうなるんだろう?」というハラハラ感も持続していますし、テンポもよくて、それにキャラクターもよく考えて作られていますし、それぞれの演技力はさすがです。どの登場人物にも、「そうだよね」って共感するシーンが満載でした。

今、世界のどこかで、こういう人たちがいて、活動しているのかもしれないなあと、思ってしまうのです。

それと、ウイルスが発生してから拡がっていく様子・・・

今まさにそういう状況なんだよ・・・・・・・!と思いながら、観てしまいます。

そして今、どうなるのか予測がつかない状況で、みんな生活しているから、本作の展開がすごく気になるわけですよ。

どうなるの?

どうなるの?って。

映画の中の登場人物たちと、リアルで起こっている世界中の人たちが、リンクしているっていうか。

というわけで、ウイルスに感染してから世界がどう変化していくのか?という様子を、具体的に詳しく描いて、さらに恐ろしいスリラーへと脚色した作品です。

グウィネスが冒頭で死ぬ役なのは驚く。
しかし、後で過去にさかのぼるシーンがたびたびあり、ああそうかと納得しました。

感染源は香港・九龍。それが一人の女性によって米国へもたらされ、全土へ拡大してしまうのです。
やはり中国なのか・・・と、思わざるを得ない。
本当の感染源については、ラストシーンでわかるのだけど、ここではネタバレになるので書かないでおきますね。
最後までお楽しみにしておいたほうが良いかと思います。エンドロールの間、愕然とします。

どこでどんな風に感染するのか
社会がどう動くのか
経済、ブロガー、陰謀論者、メディア、学校、暴動、強盗、、、
葬式はできず、食事の配給は足りない。・・・終了してしまいさにらるパニックへ。
ワクチンの研究がどんな風に進んでいくのか。
様々なシーンがわかりやすく描かれていました。

私が特に勉強になったのは、感染経路をたどっていく方法でした。
なんか・・・犯罪者を追求していくのとよく似ているんですね。
聞き込みや防犯カメラなどで経路をたどっていくと、知りたくない行動まで露呈してしまって。。。

BGMが無いシーンでは、効果音がリアルで、まるでドキュメンタリーのよう。
症状が出る表現は、ちょっと怖い・・・。

感染モノで描かれる一番の恐怖

ゾンビものなどでもよく描かれていることなのですが、感染系映画で一番怖いのは、人。

ウイルスよりも何よりも怖いのが人間・・・なんですよね。。。
もっと言えば、人間の恐怖感、でしょうか。

人間の感情や思考が、パニックや暴動を生み出してしまうこと。
恐怖感、過剰防衛が、様々な問題を引き起こし、それがさらなる恐怖へと、膨らんでいくのです。

人が人を信じなくなっていく世界・・・。

あたりまえの日常や人生の貴重な時間が失われていく悲しみ。
これはミッチの娘ジョリーによく表現されていました。
青春を謳歌するティーンエイジャーなのに、ボーイフレンドとすら会えない。

大好きで欠かさず見ている海外ドラマ『ウォーキング・デッド』でもしっかり描かれているのですが、やはりこういった緊急事態において、一番の恐怖をもたらすのは、人間の内面なのですね。
暴動、強盗といった犯罪だけでなく、エゴが強くなり、こういう時に人の本質(本性)が表面化します。
自分のことだけ守るのか、自分以外の大切なものを守るのか?
様々な葛藤が発生します。

それにしてもこの映画、大統領とかホワイトハウスとか、あと、ヨーロッパやアジアに関しても、政治家がほとんど出てこないんですよね。そこがちょっと不思議っていうか。意外でした。
政治的な視点を加えると、ややこしくなるし長くなるから排除したのかなあ?ここは監督に聞いてみたいですね。
軍は出てくるんですが。

後味の悪い結末

ベス(グヴィネス)が感染源なのは最初からわかっている形で、話が進行していくのだけど、本当の感染源は、ラストシーンまでわからないのです。

ラストの、感染源が発覚シーンはかなり!!!衝撃でした・・・・・!
めっちゃやばい。

しかし、結局最後はワクチンが開発されて、誕生日の当選順に打って終わり。
それって・・・あまりにもありがちエンドで面白くないです。
「それで?」と言いたくなるが、この作品は”現実的な”スリラーなので仕方ないかも。

ヘッジファンドの投資家が、アランに、次はどの株が上がるのかと意見を聞いてくるシーンも印象的。

うさん臭い陰謀論者のアラン(ジュード・ロウ)が、やけに印象に残るセリフを語ります。
「人間の未完成な免疫システムをネタに金を稼ぐのは、僕が最初ってわけじゃないぞ。
製薬業界なんて年中やってるさ。」

これから作ろうとしているワクチンに対して、次のように語ります。
「・・・10年後、自閉症とか睡眠発作、ガンさえも引き起こすかも。わかりゃしないさ。
ほらあの、豚インフルエンザワクチンのせいで死人が出たじゃないか。神経疾患で。(※参考記事が下に記載)
僕らはみんなモルモットだ。この先ずっとな。
そのうちに副作用のリストが出てくるだろう。映画のエンドロールみたいに。」

・・・まるで映画のエンドロールみたいに大量の副作用の数に違いないぞ、って意味ですよね。
世界を引っ掻き回す問題人物は、時々まともな発言をするものなんですねえ。

実はコウモリが出てくるんですが・・・。
映画とはちょっと違う話で、コウモリは、”ドローン”、生物兵器として研究されていると聞きます。
有り得そうな話でこれが一番怖い。

いずれにしても肉食が元凶なのでは?
と、人々の常識について、あらためて考えさせられます。

後味の悪い映画を見て、あまりにも現実と一致している部分が多く、げんなりしたあとは・・・
好きな俳優がいっぱい出ている映画で癒やされよう。
まだ見てない名作映画を今のうちに見よう。と思うのでした。

※参考記事

1976年10月、豚インフルエンザの集団予防接種が開始された。ところが数週間もたたないうちに、注射の直後にギラン・バレー症候群を発症した人の報告が入り始めた。ギラン・バレー症候群とは、麻痺を伴う神経疾患だ。2カ月足らずで500人が発症し、30人以上が死亡した。

1976年の豚インフル:集団予防接種で副作用による死者多発より引用しました。

そうそう、U2の「All I Want is You」が印象的に使われています。
素晴らしい曲です・・・!!!
いや、良い曲なのはじゅうぶんわかっていたけれど、使われているシーンが心にしみて。
いやあ良い曲だなあ~~~と、しみじみ思うのでした。

コンテイジョンの超豪華なキャスト

出番は少なめですが、大好きなジョン・ホークスが出ていて、嬉しかったですね♪

「ダークナイト」にも出ていた、チン・ハン。バットマンに捕まってましたね~w
香港っていうと彼なのかっ?!と、登場シーンでは思わず笑ってしまいました。

ジュード・ロウが、なかなかに興味深い役をやっています。
嘘つきなんだけどww

海軍少尉が大好きなブライアン・クランストン♪
ドラマ『ブレイキングバッド』で大ファンになりました。
今回はやけに”フツー”な感じで、むしろ驚くっていう・・・。

人々の心理描写については、結構しっかり踏み込んでいるので、その点は興味深く観ることができました。
マット・デイモンの、抑え目な演技が良かったです。
妻と息子を亡くしたミッチは、感情を出しすぎず・・・というか、あまりの事に感情を出せない状態でいるという感じです。
娘を守らなくてはならないから、そのことに必死で、現実的に行動していきます。

ケイト・ウィンスレットの存在感も素晴らしかったです。彼女はとても印象に残っています。
ネタバレになるので書きませんが、彼女の行動や演技、心に残りました・・・。

吹替版は、豪華声優陣による確かな演技を堪能できます!
皆さん役にはまっていました~。

『コンテイジョン』のキャスト達がコロナウイルス感染対策動画に参加

コロンビア大学の公衆衛生大学院は、映画『コンテイジョン』に出演したキャストに、ヴァーチャル結成し、コロナウィルス感染対策として、ひとりひとりができることや気を付けることなどを語ってもらい、動画アップしています。

『コンテイジョン』キャスト陣からの新型コロナウイルス感染拡大防止メッセージ
ケイト・ウインスレットとマット・デイモン(日本語字幕付き)

以下は、字幕なしです。コロンビア大学の公衆衛生大学院のyoutubeチャンネルより

コンテイジョンはアマゾンプライムで視聴できます。
私は結局、アマゾンプライムで3回も観てしまいました(苦笑)。
吹き替えで観て、字幕で観て、あと、「あのシーンどうだっけな?」と確認したりと。
視聴期限が無いし、いつでも見れて、本当に便利ですね。すっかりアマプラ民です♪

関連作品

007 ノー・タイム・トゥ・ダイ Bond 25 (2020) の脚本に、本作で脚本担当のスコット・・バーンズが参加しています。
『コンテイジョン』の脚本がとてもよくできているな~と感心していたので、期待がふくらみます。


Prime Videoで見る(吹替版)
Prime Videoで見る(字幕版)
NetFlixで見る

『ナイロビの蜂』

製薬会社の陰謀について、とても勉強になった作品です。
原作はジョン・ル・カレの小説。監督は『シティ・オブ・ゴッド』のフェルナンド・メイレレス。
『ナイロビの蜂』無料配信中!U-NEXT

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