キングス&クイーン


劇中で、とても心に刻まれる詩があります。

<ノラのセリフから・・・>

「水があることは のどの渇きが教えてくれる
陸は 超えてきた海が
恍惚は 苦痛が
平和は 戦いの物語が
そして 愛は 記念の肖像がおしえてくれる

もはや私に渇きはありません
二本の足で大地の上に立っています
ようやく安らぎの中に・・・」

これは、イスマエルがノラに語って聞かせた詩なのです。

重いテーマかな?というよりはむしろ、すごく哲学的で深い内容でした。
フランス映画の雰囲気のせいかもしれないけど、とっても文学的な感じで。
すごくいい作品でした。
泣く、というよりは、深く考えて心に刻まれるという印象かな。
キングス&クイーンというよりは・・・、この裏タイトルは”天使と悪魔”(あくまでも私見)。
誰が天使で、誰が悪魔かは、ご覧になって確認を。

自由奔放で自己に正直な、イスマエル。
打算的な女、ノラ。
二人の物語が別々に同時進行していき、あるとき、重なる。

セリフや、登場人物にしかけられた痛烈で巧妙な罠が、すごくおもしろい。
監督の率直さというものが、非常に気持ちよい。

イスマエルが、年はいってるけど綺麗な医師にむかって「美人だ」と言うと
「ありがとう。よく言われるの」には笑った。
だって、その医師はかのカトリーヌ・ドヌーブなんですもの。
入院してる人より、よっぽどアブナイ、ヤク中の弁護士とか。
イスマエルのお父さんも最高。胆のすわった、ふところの大きい人。


実はこの作品は「ミュンヘン」のときに強烈に私の心に残ってしまい、
ずっと気になってしかたがなかった、マチュー・アマルリックが出演ということだったので、
張り切って行ってきました。
やはり、素晴しく良かったですね、マチュー。
ヴィオラ弾きというところも、すごくいいツボでした。
この作品は、マチューの魅力でほぼ(80%くらい)できあがってる感じでした(強引な感想)。
マチューはもう、演技を超えた表現力で、天才的です。
この人の持つセクシュアリティと、知性の共存がたまらないですね。
俳優にはセクシュアリティがつきもので、しかし、時々それが鼻につく人も少なくない。
やたらにフェロモンを出しすぎると「下品」になってしまうから、難しいところ。
なにごとも、ほどほどに?
侘寂なのです。なんてね・・・。

「自己犠牲と苦難に満ちた人生を送ってるつもり」
「しあわせを手に入れてるつもり」
こういう「善良さ」を演じている人って、心から軽蔑に値する。
自己犠牲ほど欺瞞に満ち、偽善なのだと。
でもそれは対比のために必要な存在なのでしょう。
悪があっての、善である、と。

それにしてもこの話、実話に基づいているそうです。
そんなわけで、いろいろと騒動があったようです。
事実とは、まさに残酷なものです。

非常識な善と、常識の悪。
この対比が素晴しい。
個人的には、深く心に刻まれるメッセージが、確かにありました。
これを、マチューが演じてくれたということが、まさに記念的作品でした。

「ミュンヘン」買わなくては!
次は「マリーアントワネット」なのです!時代もののコスプレが楽しみ(笑)。

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