METライブビューイング「ジークフリート」

METライブビューイング「ジークフリート」鑑賞。

オペラにこんなにものめり込む以前は、敷居の高かったワーグナー作品も、何度目かの鑑賞となり、少しずつだけど徐々にその世界観や音楽性というものに理解を深めていくことで楽しみが増している。

次に観る時には自分はどういう感じ方をするのだろうかとか
その時にはどんな自分になっているのだろうかとか、
そんなことを考えさせてくれるのもワーグナー作品、とりわけ”RING”のおかげだ。


久しぶりの「ジークフリート」すごく面白かった!

今までの感じだと、このRING4部作では「ワルキューレ」が一番面白いかなあと思っていたけども、ジークフリート。英雄主役の本作、すごく面白いではありませんか。

私のようなトールキン作「LORD OF THE RING」のファンならではのツボ満載だったし、ファンタジーやRPGの王道ともいうべきアイテムやシーン、キャラ設定などなどの連続に反応しまくりだった。

折れたる剣ノートゥイングに角笛に隠れ頭巾に指輪。

しかもこの舞台の演出では、指輪が光ってる!

アルベルトはゴラムにかなり近いと思う。

“さすらい人”に変身したヴォータンは、まるでガンダルフか、あるいはアラゴルンという感じ。
「ワルキューレ」まではつけていたアイパッチはなしで、なんと、片目に黒いカラーコンタクトを装着してる。舞台じゃあ、ほとんどの観客がわからないだろうとおもうのだけど。
でもカッコ良かった。

ブリュンヒルデって、盾を持って戦う乙女のイメージだから、LOTRだとエオウィンのイメージに一番近いのかな。次にアルウェンかも。

・・・という感じであれこれというかほとんどすべてと言っていいくらいLOTRにつなげて観ていたらもう大変☆てな感じで、そういう意味でのお楽しみ満載なオペラなのです。

もちろん、そういった視点でなくて、作品そのものの深さには、回数を重ねるごとにじんわりと浸っていきます。1度や2度でなく、何度も何度も観てその奥行きの深さを知るたびに感動が深くなるのです。


テキサス出身のテノール、ジェイ・ハンター。
今回、病気のため急きょ主役交代となって、初のジークフリート役だそうですが、なんとまあこれがハマり役で、評判も上々だったようです。
ご本人の性格も反映されているのか、若々しく大胆でやんちゃなジークフリートにはぴったりの雰囲気でした。

舞台裏をちょこちょこと見せてくれて、素に戻る時のジェイ・ハンターがなんとも可愛らしかった。

この作品についてそう詳しくないが、ジークフリート役はテノールにしてはずーっと低音気味に歌い続け、最後のブリュンヒルデが目覚めた後の2重奏で一気に高音で盛り上がる。

ジークフリートを歌える歌手は現在、世界に数人しかいなくて、しかも
“恐れを知らぬ者”と歌うが、歌手自身はこの役を”恐れる”のだそうです。
本当に冗談抜きで、5時間もの間ほぼ出ずっぱりの歌いっぱなしだし、しかもあの声域とか、音楽の解釈とか、ジークフリートはかなりの難役。

小鳥についての解説もあった。
3Dアニメで、なんと、音にあわせて口が動く仕組みになっているのだとか。

あらゆる意味で超越したオペラ作品と思う。
ワーグナーがこれを作った時にはこんな舞台になることは予想していなかったと思うが、まさに指輪の世界を見事に表現していた。
そして、これだけの質の高さを維持していくのは大変なことだと思う。

“恐れを知らぬ者”
“賢さではなく、ここで必要なのは愚かさなのだ”

とか・・・

セリフにこめられた意味の深さが心に響く。

最初はほとんど入っていけなくて戸惑ってしまったワーグナーのオペラだけど、こうしてリピートすることでだんだんと深みにはまって行く気がしてそれが楽しい。

ところで、メトロポリタン歌劇場の客席の天井につけられたシャンデリアは、上下するようになっているんですね。上演開始直前に、するすると上がっていくのを見て驚いた。