オリバー・ツイスト

少し前に、BBCのドラマ「われらが友」「大いなる遺産」などをDVDで観ていて、ディケンズの独特のひねりと風刺と、人物描写のおもしろさ、ストーリー展開の引き込みかたのうまさ、などなどにある種の快感がありました。
なんというか・・・。一筋縄でいかないところがいい、というか、凄い。
善と悪の描き方も面白い。人間のダークな面の描写や、全体を流れる暗い雰囲気も好き。
今回もきっと、そんな感じなんだろうなあ~と思いつつ観ていました。

やっぱり、そんな感じ、でしたが、とっても面白かった!
特に終盤のダダダっと話がたたみかけるようにまとまっていくところは、素晴しい!
来た来た!と思ってニヤリとしました。(原作未読なので)
で、そういう素晴しい原作があって、映像も凄かったです。
まず観終わって、娘と「帽子がかわいい~~」とにっこり。
少年たちのかぶっている帽子がどれもすっごくかわいい!
今回の作品は、女性の出演が少なく、ほとんど男性。
クラシックなメンズ・ファッションショーを観賞するがごとく、衣装を堪能しました。
帽子から始まって、肩パットなしの手縫いのジャケットとか、短い丈のパンツにブーツ、とか。
ベストも素敵だし、ボウタイも!
貴族ではなくて貧民が主体なので、ジャンクファッションがそれはそれは素晴しくて、穴の開き具合とか、裾のほころびなんかにもついつい目が集中してしまう。
それにざっくりしたウールや麻の、生地の風合いとか。

はあ~~っと衣装に見とれていると、今度はセットの素晴しいこと!
これはほんと、凄かった。
リアルということもありますが、いい感じの暗さが出ていて、色彩感もいい。
ストーリーにものすごく合ってる。

それから小道具も!食事のときのカップやスープのボウル、事務机の上のものとか・・・
本やインクびんや、ひとつひとつがすごく気になって、きっといちいちこだわって置かれているんだろうな!と思ってワクワクしました。
監督はギュスターヴ・ドレの版画をもとに当時のロンドンの風俗を表現したとありますが、映像を観ていると絵画的というよりはやはりもっと硬質な感じの、うん、それは版画的なのかも!
とにかく美しくてアーティスティックで、実に良かった。
始まりのシーンが、版画から実写に変わっていき、またエンドロールで版画をずっと使用しているところもとても良かった。
少年たちも、俳優さんたちもそれぞれとても個性的で、素晴しかった。
主役のバーニー・クラーク、知的で憂いがあって、本当に役そのままでした。
もう、これはDVDを購入して、メイキングをじっくり楽しみたい!

オリバー・ツイスト [DVD]
バーニー・クラーク (出演),‎ ベン・キングズレー (出演),‎ ロマン・ポランスキー (監督)