ブリック

一日に2~3本の映画をまとめて観ることは、最近特に多くなってきています。
一気に観ておかないと、なにしろ時間がとれない。
劇場の大スクリーンで3本観ると、かなり目が疲れます(笑)。
そうやって、たくさんのビジュアルとか様々な情報を頭に詰め込んでおくのです。
そう、私が映画をたくさん観るのは、ただの息抜きとか趣味の範囲ではないんです。
これは、本を読むのも同じ事なのです。
脳内に取り入れたものは、必ず何かに生かされていくのです。

大作も決して嫌いではないのですが、感覚を鍛えるには、こういうインデペンデンス系作品が一番いいですね。
ちょうど同じ日に『13/ザメッティ』も観て、なんとなく意識して選択したわけではなかったのですが、終わってみたらこの2作品は性質がとてもよく似通っていましたね。
そういうところにも偶然がないというのは興味深いです。

さて、まず、冒頭の美しい女の死体を眺める男の子のシーン。
この冒頭から感動しましたね。
とても美しいんですもの。
沈黙の中、ただ、水の流れる音が聞こえている・・・。
ここですっかり、心をつかまれてしまったわけです。

さて、美しい女の死体といえば思い出すのが「ツインピークス」です。
私も、TV放映中にはその意味不明のオリジナルな世界にすっかりハマッてしまい、毎週楽しみでしかたがありませんでした。
そういうことを懐かしく思い出しながら、楽しく観ていました。


ハードボイルドなフィルム・ノワールを、高校に持ってきました~(笑)という感じです。
なので、死体やら麻薬やらと物騒な血なまぐさいイメージでありながら、どこか肩の力の抜けたところがあるのは、高校生が主人公のせいなのか、それとも監督の雰囲気の出し方なのか。
なんかね、いい感じなのです。
さて、殺人事件がからんできて、高校生探偵!?っていうノリの、主人公ブレンダン君は、なかなかのイケメンさんで、カッコイイ。
彼の雰囲気がまた、この作品を盛り上げていましたね。存在感、かなりありました。


映像感覚も素晴しくスタイリッシュで、見ていてほんとうにあきないです、こういうのは。
すごく新鮮な感覚でした。
監督は1973年生まれという、若手ですが、カメラワークはかなりのものですね。
なんだかベテラン監督みたいなしっかりした撮り方でした。
いわゆる「大作」と言われる作品の撮り方は、とりあえず迫力はあるんだけども、わりと見せかたのパターンが決まってきていたりして、贅沢なことにそういうのに飽きてきていたので、この「ブリック」はすごく新鮮でした。
DVDを購入して、いろいろと細かいところまで研究したいです(笑)。


キャラクターの作り方も実に上手というか、ちゃんとツボをついてきていて、やるな~と思いました。
こちらは、悪役の「ピン」役のルーカス・ハース。
ピンは、トールキンが好きだそうです。
彼のおかあさん役がまた面白い。
あと、自宅で使われるカップが変に子供っぽかったりして、マザコンの雰囲気を演出しているわけですが、そのセンスがすごく面白くって、小物の使い方には妙に反応してしまいました。
例えば、この画像にもある、鴨の頭のついたステッキに、黒い服。
はっきりいって、意味不明っぽいんですが(笑)、こういう意味不明さもツインピークスっぽくて面白かった。
ツインピークスを2回も使ってしまいましたが、真似とかそういうのではなく、ちゃんとオリジナルになってるところもよかったですね。
マッチョな用心棒とか、優等生なイメージで事件解明に協力的な相棒とか、革ジャンの不良少年とか、体育会系の目立ちたがり屋とか・・・まだまだ、いろんなキャラが登場するんですが、これもミステリーとか学園ものにはありがち、というか、なくてはならない楽しき、愛すべきキャラクターたちなのです。
演劇部の看板女優の子も、登場するたびに違う舞台メイクで、楽しませてくれました。
しかも、皆が皆、なあ~んかアヤシイ態度(笑)っていうところもミステリーっぽくて楽しい。

謎のキーワードとか、暗号とか、いちいち意味はなさそうなありそうなシーンや小道具などなど、ほんと、監督さんは映画を楽しんでいらっしゃるのです。

さて、美しい死体を演じたのは、

「LOST」でシングルマザーのクレア役、エミリー・デ・レヴィンでした。
とっても似合っていましたね~。
ブレンダンとは、恋人同士だったという設定。

脚本もよくできていて、トールキンがセリフのなかに出てくるあたり、物語るのが好きとみえて、セリフなどにもかなりのコダワリがみられました。
スラングが多用されていて、その言葉がいろいろにリンクしたり、謎解きのヒントになっていたり、複雑な言葉遊びが楽しかった。
英語のスラングがわかると、よりいっそう楽しめるのでしょうね。

感覚刺激に抜群の効果でした。DVDで何度も観たいです。