キングダム~見えざる敵~

テロとFBIの話で、かなりシリアスで考えさせられる話でした。
最近のアメリカ映画は、善と悪の問題について自問自答するような作品が多くなっている気がします。
「グッドシェパード」もそうだし、「ブレイブワン」も。
「マイティ・ハート」もそうらしい。


マイケル・マン製作ということもあって、なかなかに骨太な作品でした。
監督はピーター・バーグで、俳優でも活躍。
ほとんど知識なしで観たので、冒頭で「うわ、シリアナみたいなのか?ついていけるかな・・・」と一瞬不安になったけど、大丈夫。
政治的な解説も非常にわかりやすく作ってくれていて、助かった(笑)。
なにしろ「シリアナ」は情報量が多すぎて、情報の処理をしているだけで頭を使って大変でした。


この作品は重いテーマなのにわかりやすく、しかもちゃんと娯楽的な要素を取り入れていて、映画的完成度が高いです。
特に印象的だったのは終盤のアクションシーンで、かなり渋い!というかリアルというか、ドキドキしました。
手持ちカメラの効果は好きですね~。特に室内は効果的。
最近わりとこういう動きのある撮り方をしているものが増えてきていると思うのですが、傍観者ではなく、画面の中に入ってその場で観ているかのような臨場感があります。
カーアクションのシーンにも驚きました。凄かった。
一般的なアクションのシーンに比べると、かなりハイグレードです。
この映画のリアリズム的な見せ方はとてもクールでいいなあと思いました。
リアルだけど、きちんとした美意識があって。
こういうきっちり作ってる作品は、やはり監督のコダワリのインタビューなどを是非聞いてみたいです。


政治的にはあくまでもニュートラルを貫いていて、妙な意図的なものも感じられないし、好感が持てます。
・・・が、テーマはテロなので、重いのです。
ずっしりとしていて、そして尋常でないくらいの緊張感が息苦しいくらいでした。
パンフに、この映画企画のスタートは「アラブ人とアメリカ人がともに戦っている姿を見せたかった」というコンセプトだそうで、国や人種を超えてともに戦う彼らは感動的でもあリ、また痛々しい場面もあったりと、心に訴えかける演出と脚本が心憎かったです。


キャスティングは「心優しきヒーローたち」、そんな風に観る者に安心感を与える雰囲気を出していたのも作品を好意的に見せていたかもしれません。
キャストが皆さん、親しみの持てるキャラクターでもあり、またすごくカッコイイんですよね。
特に私はクリス・クーパーが、いつ見ても渋くて好きです。
ジェニファー・ガーナー、さすがにアクション完璧。
でも今回の彼女はちょっとおとなしめな役でしたので、あら~控えめなのねーと思いました。
本当は「バイオハザード」のミラ・ジョヴォビッジ並にスゴイのにね(笑)。
ジェイミー・フォックス、まるで「マイアミ・バイス」の延長みたいな感じでした。
でも、最後に彼が大活躍、という感じではなかったので、少々残念に思ったりしました。
やはり女性に花を持たせたということなのでしょうか。


サウジの大佐役のアシュラフ・バルフムさんが素敵でした。
大佐の一生懸命さが、とても心を打ちます。
きっと観た人は皆、彼に好印象というか共感意識を持ったに違いない。

これを観たら、また「シリアナ」が観たいなーと思いました。
DVDを購入してあるので、近いうちに観てみようと思います。

しかし・・・、殺傷力を高めるためにビー玉を爆弾に詰めているシーンはぞっとします。
爆発シーンよりも怖いものがありました。
ビー玉の見方が変わってしまいますね。

そして、私はいつも同じことを思うわけなのです。
負の連鎖でなく、プラスの連鎖を生むことに力を使いたいと。

戦争

Posted by miniaten